コラム:(大人向け)タイトルが気になる昭和のお色気映画 - 第1回
2021年1月11日更新
2021年1月11日更新
動画配信サービスの普及により、これまでなかなか見る機会のなかったジャンルの作品が、気軽に鑑賞できるようになりました。こちらではタイトルが気になりすぎて、筆者が思わずクリックしてしまった昭和のお色気映画の鑑賞レポートをお届けします。
※紹介する作品はすべてR15+もしくはR18+指定で、今日の観点からすると不適切な表現も含まれます。紹介作品をご鑑賞の際は、その旨ご理解ください。また、配信が終了することもあります。
<第1回>「セックス喜劇 鼻血ブー」(R18+)(1971/東映/高桑信監督)
いやー、映画って大人が作りますよね。お金がたくさんかかりますから、映画会社の偉い人が集う会議が何度もあるでしょうし、企画もすぐには通らないと思うんです。そこを見事に潜り抜けてきたのがこの「鼻血ブー」、小学生男子がつけたような奇跡のタイトルが「責め××」「淫らな××」などのラインナップの中に並んでいました。うっかりコンビニの成人誌棚に紛れ込んでしまったコロコロコミックみたいなものでしょうか、これは見てみるしかありません。
再生ボタンを押すと、おなじみ東映さんの打ち寄せる波、そして本編タイトルが出る前に画面に現れたのは、なんと牛! しかし、ネイチャードキュメンタリーではなく、次カットの交尾シーンに重ね「うーん、何とも早い。人間にも彼らの早さに勝るとも劣らない早さの男たちは大勢います、そこのあなたはいかがですか?」とナレーターが我々に単刀直入に問いかけます。ふむふむ……ここでテーマが提示されました。R18+作品ですからね、「ワイルド・スピード」シリーズとは求められるものが異なるのです。
その後、なんともおふざけな書体のタイトルと、主人公である自動車会社のセールスマン、早田勇を演じる左とん平さんが登場。このオープニングがまた素敵なんですよ。早田君(敢えて君付けさせてください)が同僚から手渡された「ピンク楽団 大ハッスル」と書かれたパンフレットに写るのは、裸の上半身に見えそうで見えない際どい丈のジャケットを羽織り、なぜか下は肌色ブルマ(死語ですね)、そして楽器を携えたセクシー美女たち。彼女らがパンフレットから飛び出し、演奏するカントリー調楽曲による幕開けに心はウキウキ、一体どんな物語が始まるのか期待が高まります。
そして本編に入ると、会社の慰安旅行でしょうか、温泉旅館の大広間に集められた社員を前に、部長が売り上げ成績を発表します。会場は浴衣姿の男性ばかりで、社長が一年の労いとして社員に贈るのは、胸に番号を付けた芸者さんたち。なんと、社員の営業成績順に彼女らが酒席の接待相手になると……。令和の今となってはGoToより批判されそうな旅行ですが、過去の風習なので、ここは物語の一部として流し見しましょう。
そんなどんちゃん騒ぎの夜、売り上げ成績ビリで、お相手のいなかった早田君の部屋に、お偉方の接待に疲れた、包容力溢れるベテラン芸者さんがやってきます。ここで、主人公が何ゆえに早田という名字をあてられたのかがようやく判明。経験豊富な熟女による洗礼とアドバイスを受け、大人の階段を上った早田君の男の道が始まります。身も心も素直な早田君、母性本能をくすぐるタイプなのは間違いありません。
仕事面ではサエない早田君ですが、その性格の良さでモテモテ、様々なチャンスに恵まれるものの、いざことに及ぶとがっかりされて女性恐怖症に。しかも、ライバル社の敏腕美人セールスウーマンの夏子(桑原幸子さん)にフォーリンラブ。早田君と夏子との関係、そして自己批判、自主鍛錬の物語が、正に“鼻血ブー”なサービスショットとおもしろエピソード満載で進んでいきます。山城新伍さん、萩本欽一さんら名優も登場する、昭和の男女のコミカルなやり取りはぜひ本編でお楽しみください。
それでは、「誰にも負けない立派な男になる」と心を決めた早田君の物語のクロージングまでをまとめます。
(※ここから一部ネタバレあります)
本編後半、早田君は、先日亡くなられた小松政夫さんが演じる旧友の細井と、とある場所で再会。なんと、細井は悩める男性を救うためのコンドームの発明に生涯をかけていると。そして、早田君もこのプロジェクトに参加することになり、物語はまさかの「下町ロケット」的胸アツ展開に(笑)。途中で挿入される、不二ラテックス社工場の当時の最新鋭機械の映像にはワクワクさせられますし、早田君の新たな使命、そして恋路はいかに……という少年漫画のような、R18+作品とは思えないすがすがしい着地に筆者は驚きました。
ヌードとアダルトなユーモア盛りだくさんですが、女性を尊重する、避妊具を使う、テクニックより愛が大事、というキホンのキを、明るいキャラクター達と優しい視点で描いています。これから大人の世界に足を踏み入れる18歳以上の若者にも昭和の「セックス・エデュケーション」としてぜひ見てほしい一作です。
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