コラム:板尾創路の脱獄映画万歳! - 第3回
2009年10月30日更新
第3回:3時間近い上映時間でもまったく無駄がない「大脱走」
第3回は、主演のスティーブ・マックイーンほか、ジェームズ・ガーナー、、チャールズ・ブロンソンなど豪華キャスト共演で、第2次大戦中のドイツで実際に遂行された集団脱走を描く超大作「大脱走」(63)の魅力を語る。
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◇「大脱走」ストーリー◇
第2次大戦中のドイツ。ナチスが絶対脱走不可能とうそぶく第3捕虜収容所に、大量の連合国軍捕虜が送り込まれた。連合国軍将校である彼らは皆、これまで何度も脱走を図ったことがある脱走のベテランで、組織一体となって綿密な脱走計画を練り、ドイツ看守の目を盗んで水面下で準備を進める。そして76名もの兵士が脱出に成功するが……。―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――脱獄映画が好きになったきっかけの作品だそうですが、初めて見たときのことは覚えてますか?
「TVで見ましたね。小学校高学年ぐらいやったと思います。僕の周りにはあまり映画好きがいなかったんですけど、後で聞くと、僕らの世代の人は皆けっこうTVで見てたみたいですね。当時は前編・後編と2週に分けて放映してたので、半分見て翌週続きを見るのを楽しみにしてました。しょっちゅうTVでやってたので何度も見ましたよ。単純で分かりやすい話なので、子供ながら面白い映画やと思ってました」
――では、大人になってから改めて感じる本作の魅力はなんですか?
「マックイーンという役者の魅力は、子どもの頃はよく分かってませんでしたね。後になって彼の出演作をいろいろ見て、この人ええ役者やなあと思ったので」
「どんなことにも屈しない感じというか、ほかのキャラクターとは全然違う飄々としたマイペースなところですね。ほかの人たちは連合軍の組織的な面や、戦争の一環でドイツ軍をかく乱する役割も持ってるけど、マックイーン演じるヒルツは、ただ自分が逃げたいだけなんですよね。その自由な感じというか、周りからの浮き加減がよかったですね」
――ご自身で脱獄映画を撮るにあたり、「大脱走」を参考にした点はありますか?
「細かい部分で参考にしたことはないんですが、うまく逃げられるのかというドキドキ感だったり、脱獄映画という大きい本筋で自然に参考にした部分はあったかと思います。そういえば、マックイーンがバイクでジャンプするシーンは吹替えなんですよね。それでもバイクテクニックはすごかったですけどね。
まあ今となってはいろんな手法で撮影できるから、特に目新しいことは何もないけど、当時は本当にすごかったですからね。それと、マックイーンって実はこの映画を一旦降板してるんですよね。自分がヒーローとして終わらないことに納得がいかなかったとかで、ほかのキャストに説得されたという話も聞いたことがあります。確かにヒルツは皆を引っ張っていくようなキャラクターではないですからね」
――俳優業でも大活躍されている板尾さんですが、マックイーンに影響を受けたことはありますか?
「マックイーンっていつも険しい顔をしていて、決して表情豊かなタイプではないんです。アップとかちょっとした沈黙で気持ちを表現する役者で、それがすごくリアルなんですよ。本人の存在感だけで勝負できるようなところがありますね。どっしりしているのに、すごく気持ちが入ってる。そういう意味でもマックイーンはすごく絵になる俳優やと思いますね。僕も演じる上でやたら説明するようなことはしたくないし、どちらかというと気持ちで表現するようにしてます」
――最後にこの映画の見どころをお願いします。
「エンターテインメントが詰まっている映画で、3時間近くあるのにどのシーンもまったく無駄がないです。テーマ曲の『大脱走マーチ』は客観的でストーリーから浮いていて、それが逆に切なくなるんです。映画に合ってないようで合ってるんですよ。本当によくできた映画なので絶対一度は見てほしいですね。今見てもまったく色あせないし、役者さんも皆すばらしいですよ」
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「大脱走 アルティメット・エディション」
原題:THE GREAT ESCAPE
製作・監督:ジョン・スタージェス
原作:ポール・ブリックヒル
脚本:ジェームズ・クラベル、W・R・バーネット
出演:スティーブ・マックイーン、ジェームズ・ガーナー、リチャード・アッテンボロー、ジェームズ・コバーン、チャールズ・ブロンソン
価格:2枚組 2990円(税込)/発売中
発売・販売元:20世紀フォックスホームエンターテイメント・ジャパン