コラム:人間食べ食べカエル テラー小屋 - 第50回

2023年6月29日更新

人間食べ食べカエル テラー小屋

ホラー映画ファンの中でも評価が高く、続編を望む声も多い「ミック・テイラー 史上最強の追跡者

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ミック・テイラー。その名を聞けば、ローリングストーンズの元ギタリストを思い浮かべる人もいるかもしれない。しかし、ホラー映画をよく観る人からすると、その名はオーストラリアに潜む極悪殺人鬼を指す。今回はオーストラリアが生んだ殺人鬼の活躍を描くホラー「ミック・テイラー 史上最強の追跡者」を紹介します。

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見渡す限りの荒野を走るトラック。運転席に座る男の名はミック・テイラー。見た目は、いたって普通のワイルド系おっさんだが、その正体は恐るべき連続殺人鬼だった。ミックさんは早速、挨拶代わりに警官2名をサクッと惨殺。だが、それはあくまで前菜。メインになるのは海外から来た若き旅行客たちだ。一度ヤツの獲物になったが最期。地の果てまで追いかけられる……。

本作、実は続編である。「ウルフクリーク 猟奇殺人谷」という字面のインパクトが強いタイトルのホラー映画が1作目に位置する。ただ、両作品に共通するのは殺人鬼ミック・テイラーのみで、ストーリー自体に深いつながりはないので、本作単体でも十分に楽しめるから安心してほしい。1作目はホラー色が強く、まさに猟奇的な内容だったが、本作はテイストが変わり、アクション色が前面に出ているのが特徴だ。

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冒頭の警官殺しのシーンから既にテンションがフルスロットル。殺人鬼と知らずにミックさんを煽りに煽った警官2人が、パトカーの運転中に案の定殺られるのだが、その死に様がパーフェクト。まず運転手がライフル狙撃で顔の上半分を吹き飛ばされるという、あまりにも景気の良すぎる死に様が飛び出す。口から上が消し飛んだ特殊メイクが素晴らしい! しかも、それを何度もじっくり嘗め回すように映してくれる。そしてパトカーは豪快にクラッシュ。残る1人は、散々命乞いをさせられた挙句ガソリンを浴びせられて燃やされるという100点満点の末路を辿る。ミックさん、今回は相当に気合が入っている。

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次なる獲物として、海外から旅行に来た若者たちに狙いを定めると、ミックさんは更にやる気を爆発させる。なぜなら彼はオーストラリアに来る旅行客が大嫌いだから! 愛する国を呑気に土足で踏むやつは許せねえ!と、歪んだ愛国心を肥大化させているのだ。最初に目をつけられたドイツ人カップルは速攻でやられるのだが、この際にも超グロテスクな殺しの見せ場があるので、是非堪能してほしい。

その後は、そのカップルの殺し中に巻き込まれた哀れな兄ちゃんが、ミックに延々と追いかけられ続ける追跡アクションスリラーへとジャンルがスイッチする。中でも、中盤で繰り広げられるカンガルー轢殺カーチェイスは、この映画の白眉だ。道路を横切る無数のカンガルーが次から次へと轢かれまくり血肉をまき散らして宙を舞うシーンは、マジで正気の沙汰じゃない! オーストラリアのカラッとした空気にスティーブン・スピルバーグの大名作「激突!」をブチ込んだ、ユニーク極まりない展開がとにかく楽しい。

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そこからさらにジャンルスイッチをかまして、後半は再び猟奇ホラーの一面を強調する。このように、物語が進むたびに作りがガラッと変わるので、たとえ景色が一辺倒でも全く飽きることが無い。手を変え品を変え、話に起伏を持たせる工夫を評価したい。終盤の見せ場となる地獄のクイズシーンも、絵面こそ地味だが、ミックさんがどのポイントでブチギレるのか全く予想がつかず、非常にスリリングで見応えがある。

本作の監督は、前作に引き続きグレッグ・マクリーンが務めている。1作目と比べると演出の引き出しが多く展開も多彩で、かなり腕を上げていると感じる。本作で更に名を広めたマクリーン監督は、社員同士が殺し合いを強制させられる「サラリーマン・バトル・ロワイヤル」や、またしてもダニエル・ラドクリフが酷い目に遭うサバイバル映画「ジャングル」など、手堅く面白いジャンル映画を撮り続けている。このまま職人監督として、良作を生み出し続けてほしい。

この映画はホラー映画ファンの中でも評価が高く、続編を望む声も多い。一時期は3作目の企画の話も出ていたが、今は完全に音沙汰がなくなってしまった。陽気だけど基本殺る気でキレポイントがトリッキーなおっさんというミック・テイラーのキャラは、唯一無二でとても魅力があるので、是非また彼が活躍するところが見たい。首を長くして新作を待ってます!

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筆者紹介

人間食べ食べカエルのコラム

人間食べ食べカエル(にんげんたべたべかえる)。人間食べ食べカエルです。X(旧Twitter)で人喰いツイッタラーをやっています。ID @TABECHAUYOで検索してみてください。WEBや誌面で不定期に寄稿をするほか、新作へのコメントなどを書いています。好きなジャンルはホラーとアクションで、特にモンスターに人が食べられるタイプの映画に目がありません。「ザ・グリード」に出てくる怪物を目指して日々精進しています。どうぞよろしくお願いします。

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