コラム:若林ゆり 舞台.com - 第14回
2014年8月20日更新
第14回:川平慈英が真夏の夜、三谷幸喜の「ショーガール」でソング・アンド・ダンス・マンとしての魅力を全開に!
サッカー中継には欠かせない熱い男。川平慈英といえば、多くの人がこんなイメージを浮かべるだろう。または、「クゥーッ!」や「そうなんですっ!」といった決めフレーズや熱キャラを活かしたCMか。しかし、川平慈英の魅力は、そんなものではない。むむっ!? そうなんです! 彼は日本のショービジネスを背負って立つ、ものすごくデキるソング・アンド・ダンス・マンなんですっ!
その川平慈英が、もてる魅力を最大限に発揮するときがやってきた。三谷幸喜が手がける大人のためのエンタテインメント「ショーガール」に主演するのだ。「ショーガール」はもともと、故福田陽一郎さん演出、木の実ナナ&故細川俊之さんのコンビによって1974年から88年までPARCO劇場(当時は西武劇場)で上演され、伝説となっているお洒落なショー・シリーズ。このショーをリスペクトしてやまない三谷が、いまは亡き福田さんに育てられた川平、そしてシルビア・グラブのコンビで復活させるというから、楽しみではないか!
「もうおそらく僕がいちばん楽しみだし、うれしいですよ! 三谷さんが、僕が歌ったり踊ったりできるミュージカル・アクターだということをもっと広く知らしめたいと言ってくださっているみたいで。僕の前では言わないんですけど(笑)。このショーに呼ばれて、ビックリしたんですけど、ビックリしていない自分がいるんです。探していたパズルのピースが、満を持してキターァッ! そんな感じがしているんですよ」
川平が福田さんと最初に出会ったのは、この劇場で上演されたショー「カーテン・アップ!」のオーディションだった。もちろん見事、合格。92年と93年に上演されたこのショーには「新・ショーガール」というサブタイトルがついていたのだ。以来、2人はさまざまなショーやミュージカル作品でタッグを組む。グラブもまた、福田作品を多数経験している。
「福田さんはまず、自分を表現したくてしょうがない連中を連れてくるんです。“出る杭”が大好きなんですね。そいつらに、自由にやらせながら軌道修正し、調整していくというやり方です。みんな明らかに毎回やり過ぎて、『ジェイ、そこまでやらなくていい』なんてね(笑)。三谷さんは、これとは対照的かもしれない。三谷さんの場合は、その人の隠れたよさを見つけて、それをぐぐーっと引き出すのがうまいんです。自分では気づいていない、光り輝く何か、くすぶっている原石みたいなものが見えるんでしょうね。だから稽古場ではがんじがらめですよ。僕がいいと思ったことが全然ダメで『鼻につく』って言われてしまって。最初は本当にやりにくいんです。でも、それが面白いみたいなんですよ(笑)」
では、“やんちゃ系”川平のどんな新たな魅力が発見できるのだろうか。たとえば、“セクシー系”とか!?
「どうなんだろ(笑)。オレもう、わかんない(笑)。実はそんな、ないんですよ、大人の男のセクシーな部分は! そこがね、ズルッとくるのか、新鮮さがあるのか。前半の芝居では僕、探偵なんですけど、ダメダメ人間ですよ。“負”の部分が見えるというか。余裕はない感じですねえ」
コラム
筆者紹介
若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。
Twitter:@qtyuriwaka