コラム:編集部コラム やっぱりアニメはヽ(´▽`)ノ日本が一番 - 第16回
2013年10月17日更新
第16回:宮崎駿監督引退後のアニメ界、新世代作家も続々
宮崎駿監督が長編映画の製作から引退を発表しました。巨匠の引退は惜しまれますが、日本アニメ界には細田守監督であったり、原恵一監督、あるいは庵野秀明監督、神山健治監督などなど、すでに世界にも名をはせた、次世代を担っている40~50代の名監督たちがおり、ことさら悲観することはないと思ってます。
今月ご紹介したい「サカサマのパテマ」(11月9日公開)を手がけた吉浦康裕監督は、そんな次世代監督たちよりもさらに若い、1980年生まれの33歳。今回が実質的な初長編監督作で、世間的なネームバリューはまだまだこれからだと思いますが、注目したいクリエイターのひとりです。
2005年、個人制作のアニメ「ペイル・コクーン」がDVD発売され、商業デビュー。08年にネット配信した「イヴの時間」(全6話)が評判を呼び、劇場版として再編されて公開。ロングランヒットを記録しました(当時のインタビューがこちらにあります)。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズにデザイナーとして参加も果たし、今回の「サカサマのパテマ」へと至ります。
「サカサマのパテマ」は、地底から降ってきた少女パテマと、空を忌み嫌う世界に住む少年エイジの出会いと冒険を描いたオリジナル作品。2人の住む世界はそれぞれ天地が真逆で、ポスタービジュアルにも描かれている互いにサカサマな少年と少女が抱き合ったイメージが出発点となり、物語が生まれたそうです。本編中、主人公とヒロインがずっとサカサマに向き合っている姿や世界観は新鮮で、互いの世界を行き来するたびに「いま、どっちが上だっけ?」と上下が混乱しそうにもなりますが、最後にはなるほどと思わされる仕掛けも待っています。
空から降ってきた少女と少年の出会いといえば、宮崎監督の「天空の城ラピュタ」ですが、「サカサマのパテマ」は地底から降ってきた少女と少年のボーイ・ミーツ・ガール。「ラピュタ」のように長く愛される作品になればと思うところです。
個人制作作品から名を挙げた監督といえば、今年「言の葉の庭」もヒットした新海誠監督(73年生まれ・40歳)が、すでに多くの実績や知名度を獲得していますが、吉浦監督も新海監督に続く存在として、これからが期待されます。
また、さらに若い監督として、「陽なたのアオシグレ」という短編作品を完成させたばかりの石田祐康監督も、アニメファンとして気になるクリエイターです。1988年生まれで今年25歳。09年の学生時代に手がけた2分22秒の短編「フミコの告白」は、大好きな男の子に告白する女の子フミコの純情を文字通り一直線に描いた作品で、第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞ほか多数受賞。11年に発表した大学の卒業制作作品「rain town」でもメディア芸術祭アニメーション部門新人賞などを受賞し、すでに注目も集め始めています。設立されたばかりの制作会社スタジオコロリドに招かれ、初の商業作品として手がけたのが「陽なたのアオシグレ」です。
「陽なたのアオシグレ」は、好きな女の子への思いを伝えるため走り出す男の子の姿を描いた18分の短編で、後半に待ち受けるイメージの奔流や爽快感、疾走感は「フミコの告白」を彷彿とさせます。こちらは10月13日にシネ・リーブル池袋で1日限定上映され、チケットが即日完売。これを受けて、11月9日からシネ・リーブル池袋のほか、テアトル梅田、ブリリアショートショートシアターで公開されることが決まりました(同時上映作品がベテランアニメーター、なかむらたかし監督の「寫眞館」という作品で、こちらも素晴らしい出来栄えです)。
「フミコの告白」「rain town」はYouTubeで本編がまるまる鑑賞できるので、未見の方はぜひチェックを。
個人制作から新たな才能が続々と生まれるようになった昨今。今回紹介した吉浦監督や新海監督、そして石田監督のような新たなクリエイターが、未来の日本アニメ界を引っ張っていくかもしれません。