SHOGUN 将軍のドラマレビュー・感想・評価

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採点 未評価

1.0 仕事の遅い人々の住む異世界にアメリカンヒーローが迷い込んだファンタジー

せきれいさん
2025年6月21日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

1975年のアメリカの小説『将軍』の実写化ドラマシリーズ作品。オランダ船に乗ったイギリス人が安土桃山時代の日本に漂着し、徳川家康に召し抱えられ、侍となった実話が元になっている。

大きな賞の受賞歴があり、ネットニュースでかなり話題になっていた作品だったので、楽しみにしていたのだが、正直楽しめなかった。以下、理由を列挙してみる。

第一に、話の展開が遅く、目的も行動も不可解。

三話ぐらいまでは、そこそこのテンポで話が転がっていくのだが、その後は戦争するのかしないのか、なんとも曖昧な状態で、思わせぶりな会話を中心とする陰気な展開が最後までダラダラ続く。

主人公が狙われる訳も、カトリック勢力の陰謀もどこへやら。白人主人公が文化の理不尽さに振り回され、現地に馴染む努力もせず、能力のアピールもせず、言いたいことを怒鳴ってイライラするだけの展開である。

お色気シーンやグロ描写も無理やり挟まっているが、ストーリー上必要とは思えず、演出側の趣味的なものを感じる。常に天気が悪いのも演出の好みを優先しすぎである。

史実で関ヶ原の前後というのは、面白いエピソードが山ほどあり、個人的に好きな時代の一つなのだが、このドラマでは内容が何故かスカスカである。

いっそハリウッドらしく、アクション映画風に大幅に創作して、白人が単身敵の本拠に乗り込み、ニンジャ、サムライ相手にドンパチやって壊滅させる話にすれば退屈させずに済んだのでは。

第二に、異世界といっていいほど変テコな世界観である。日本人の不可解さが大きなテーマになっていて、外国人からみてミステリアスに映る文化の紹介に異様な比重がかけられている。

例えば上官から命令されれば潔く切腹、名誉が傷つけられるぐらいなら切腹、相手に抗議するなら切腹、といった感じで、切腹や死生観の異様さがメインテーマであり、かなり大袈裟に描かれているのだが、誇張され過ぎて日本人から見ても変な世界である。

本心を言わず曖昧に誤魔化す部分も目立つ特徴で、本心を言わない代わりに、哲学っぽい言い回しや、よく分からない例えのラリーが続くのだが、こんなまわりくどい会話しかできない民族はバカみたいである。また、些細なことでいちいち自殺する民族もとっくに滅亡しているだろう。

16世紀の日本人は実用的な武器や知識に貪欲で、しなやかに逞しく生きている。決してWW2の日本軍のように根暗で頭が固く、閉鎖的な民族ではない。その辺の誤解の溝の大きさが、居心地の悪さとなって作品を楽しめなくしている。

第三に、主人公のキャラクター。なぜか現代物のアクション映画ヒーローのテンプレみたいな性格なのが気になるところ。すなわち、口が悪く、信念を曲げず、逆境にも弱みをみせないタフガイで、崖に落ちたり土砂崩れに巻き込まれた相手を救うことで信用を得ていく。

それ自体は悪くないのだが、本作では船の舵手である自分に拘り、現地に馴染む努力をせず、本国へ帰りたがるばかりの、ただの通りすがりである。これにアメリカンヒーロー風のお説教シャウトが加わると、どうにも感情移入できないイラっとくる傍観者になってしまう。

現実の三浦按針が、もっと魅力的な人物であっただろうことを思えば、この主人公の可愛げのなさは残念でならない。

せきれい
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