SHOGUN 将軍のドラマレビュー・感想・評価
「歪」で「違和感」を克服した外国発の時代劇
これまでの外国人監督が作る時代劇、日本史作品は、日本人の立場から見ると、
どこか「歪」で「違和感」があり、この感性は共有できないと、
決定的な断絶が垣間見られた。
それは、『ラスト サムライ』でも『硫黄島からの手紙』といった、
名作と呼ばれる作品ですら、例外ではなかった。
とはいっても、現代に生きる日本人の我々は、自分が生まれていない時代の日本のことを、
実際の所ではわからないし、わかった気になっているだけで、
何が本物で何が偽物かも、厳密にこうだとは言えない。
この作品は、そうした日本人の感性に対して、
作り手側のほうから「今の日本の時代劇や日本史作品自体も、だいぶ歪で、違和感があって、色々おかしいよね?」
というメッセージが存分に含まれており、
それを海の向こうから発信したという部分で、極めて稀有な存在で価値の高い作品だった。
何しろデキが良質。いくつか挙げると、
主人公の虎永と、石堂ら複数奉行らが対峙する大阪城内での、
「まつりごと(政)」の駆け引きの場面。
あの緊迫感、緊張感。確かにここ最近の時代劇では長らく観ていないことにハタと気づく。
藪重が海に落下して、万策尽きたと悟り切腹を覚悟する決断の早さ。
戸田広松の虎永への諫言に命を差し出す潔さ。
息子の長門の不慮の事故をも謀略に使う虎永のしたたかさ。
物語全般に続いていく、人々の飛びまくる首と命の軽さ。
中世日本の、その時代に生きていないはずの我々ですら、
確かにあの時代の日本なら、あるいは、日本人だったなら、
こうだったかもしれないと思わせる説得力。
日本で作られる最近の時代劇よりも、
真に時代劇っぽい描写の数々や知己に富んだアイデアは、
新しいモノを観ることができた喜びであったし、
それも擦り尽くされたはずの時代劇で、しかも海の向こうの大陸からの発信で、
この喜びに出くわした事は、本当に幸せなことだと思う。
ディズニープラスに入会して良かったと思ったし、
この作品だけでも一見の価値はあると思われる。
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