スノードロップのドラマレビュー・感想・評価
南北の権力者の捨て駒にされた人の舞台劇
ラブロマンスと説明にあったが見始めたらいきなり南北問題と人質事件になった。硬派な社会派ドラマだと思う。
1987年、ソウル五輪目前で大統領選挙を控え、軍事独裁の全斗煥政権の終わりという時期がキーポイント。朝鮮半島の南北の権力者達の利害のために一般の市民が犠牲にされてしまう。
1話が1時間半もあるのが16話も続き、人質をとってのたてこもりシーンが長々と続くので疲れて嫌になってしまう人も結構いるかと。
しかし最後まで見れば、そのたてこもりと南北の政権の駆け引きがだらだらと続いた理由がわかる。密室空間に閉じ込められた人質たちと南北の工作員達が、最初はお互いに反目しあってた敵同士だったのに、だんだんと気持ちが変わっていくプロセスを描いてるからだ。
愛国心やお国のために命を懸けろという使命に燃えてたのに、結局自分達の政府の捨て駒にされてただけだった。
韓国側も全斗煥政権下では多数の市民が冤罪で拷問され死傷したり精神を病んだ。
まるで舞台劇のような作品だった。
北の工作員役がチョン・ヘインで誠実そうな青年、北の工作員達の方がいい人そう。逆に韓国政府の幹部の方が悪人ぽい。
北のスパイだのアカだの反共で憎悪を煽っても、国とか関係ないんじゃないか、結局その人の人間性なんじゃないかと思ってくる。
北朝鮮の幹部の息子でスパイ役のチョン・ヘインと韓国の安全企画部の部長の娘役のジスはたまたま出会ったが、人質事件で閉じ込められて通してお互いを知って惹かれあっていく。
南北のボスの子だからロミオとジュリエット。
もし南北に朝鮮半島が分断してなかったら同胞同士だし、もし平凡な市民なら普通にデートしてただろうに。
韓国側が選挙工作のために自国の国民たる人質の命を犠牲にし、特殊部隊などの軍隊を突入させてるのは、去年の映画「ソウルの春」(全斗煥の軍事クーデター)や、尹前大統領の戒厳令による議会への特殊部隊突入を思い起こさせる。
次の大統領候補になりたい全斗煥政権の幹部の妻たちが夫から政治機密を聞き政治に口を出し、占い師(祈祷師)にはまっていて政治的な事まで相談してるのは、尹前大統領の夫人を思い出す。
尹氏が大統領候補に選出されたのが2021年11月で、ドラマ開始が2021年12月。もしかしてそのせいでできたドラマなんだろうか? と思った。
パク・クネが大統領にえらばれそうになった時に、全斗煥政権下での安全企画部での拷問の話などを映画を作った社会派映画監督たちもいたからだ。
最終回は涙が出てしまった。
途中でやめないで、ぜひ最終回まで見てほしいと思う。
非常によい作品だったので。
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