ミズ・マーベル
シリーズ紹介
原題:Ms. Marvel
製作国:アメリカ
原題:Ms. Marvel
製作国:アメリカ
マーベル・コミックのキャラクターが一堂に会するスーパーヒーロー映画「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」に属する作品で、魔法のプリズムを手足の様に操るスーパーヒロイン「ミズ・マーベル」の活躍を描いたミニシリーズ。
「キャプテン・マーベル」に憧れるティーンエイジャーのカマラ・カーンは、保守的な家族にうんざりしながらも平穏な日常を送っていた。ある日、曽祖母のものだという綺麗なバングルを身に付けたカマラは、突然スーパーパワーに目覚めてしまう…。
エグゼクティブ・プロデューサーはケヴィン・ファイギ。
2014年デビューという、古株揃いのアメコミヒーロー達の中ではダントツに新しいキャラクター「ミズ・マーベル」。パキスタン系アメリカ人のティーンエイジャーで、尚且つイスラム教徒であるというこれまでになかった設定が話題を呼んだ。
実写化されるにあたり、その主役に選ばれたのは新星イマン・ヴェラーニ。パキスタンのカラチで生まれ、カナダへと移住した彼女はムスリムの家庭で育っており、更にカマラと同じ「アベンジャーズ」オタクである。生い立ちといい性格といい、彼女以上にミズ・マーベルを演じるに値する俳優は間違いなく居ない。このキャスティングの妙をまずは褒めたい。
本作が他のスーパーヒーローものと一線を画すのは、ムスリムの日常や習俗を丹念に描こうという意志が見える点。例えば、モスクの内部はどうなっているの?やヒジャブの着用は義務じゃないの?といった、非イスラム教徒の我々が持つ素朴な疑問に答えてくれるやり取りが描かれているので、異文化学習ものとして素直に楽しい。
「礼拝の様子をインスタで配信しちゃお♪」みたいな軽いノリの若者も居たりして、ムスリム=敬虔で怖いというイメージがただの先入観である事に気付かせてくれるし、保守的な家族に悩まされていたりネットでのバズが1番の関心事だったりするカマラの姿を描く事で、実はムスリムだろうがその他の宗教圏の人間だろうが、ティーンの感覚は何ら変わらないという事を教えてくれる。
こういった作品を「ウォーク」や「ポリコレ」とバカにする人間もいるだろうが、異文化学習によりこれまで持ち合わせていた意識や知識がアップグレードされる事への快楽というのは間違いなくある訳で、それを冷笑的な態度で蔑むのはそもそも自分の為にならない、という事は強く言っておきたい。
ドラマは中盤、パキスタンのカラチへと舞台を移す。このカラチパートを監督しているのはシャルミーン・オベイド=チノイ。彼女はカラチ生まれの、主にドキュメンタリーの分野で活躍する映画監督で、『セイビング・フェイス 魂の救済』(2012)と『A Girl in the River: The Price of Forgiveness』(2015)で2度のオスカーに輝いている名匠である。
実はこのパート、カラチじゃなくてタイで大部分を撮影しているらしいのだが、まぁとにかくパキスタンという馴染みのない国の様子を見せてくれるというのは、それだけでテンションが上がる。パキスタン出身のドキュメンタリー監督が撮影しているというところからも、本作におけるムスリム描写にかなり力が入れられている事がわかりますね。
登場するキャラクターたちも中々に魅力的。カマラを取り巻く家族や親友たちが皆温かく、それを見ているだけで心がほっこりしてくる。特にカマラの親友のブルーノとナキア、この2人がいいヤツ過ぎてヤバい。いいヤツ度で言えばMCU最高クラスである。
このドラマ、基本的にはヒーローものというよりも少女漫画のエッセンスが強い。親友・ブルーノ、転校生・カムラン、謎のイケメン・カリームと、回が進むにつれカマラの周りに王子様候補が次々と現れ、どんどんフラグが立ってゆく。ほとんどなろう系な都合の良さ😅
世界を救う事と同じくらい、三角関係のヤキモキにドラマの重点が置かれているというのはなかなか斬新。これはカマラと同じティーンエイジャーの若い女の子をターゲットにしているからなのだろう。アメコミ好きの10代女子って日本では超希少種な気がするのだが、アメリカではどうなんすかね?
と、興味深く観たのだが、ドラマの出来としてはかなり緩い。予算の少なさからか、又は役者のトレーニング不足故か、あるいは監督の力量不足か、はたまたその全てが原因か、それはわからないがバトルやカーチェイスなどのアクション描写は軒並みもったり。他のスーパーヒーローものの様にアクションに重きを置いた作品では無いのは十分承知しているが、それでも超能力を使って敵と戦うジャンルの作品なのだから、最低限のアクション見せ場は欲しい。
脚本面も詰め方が甘い。ヴィランを倒して全部解決、という安易な物語にしなかった点は評価出来るが、敵役の改心が唐突過ぎて全くドラマとして成立していない。また、クライマックスもはっきり言ってヤケクソ。カムランをどうやってパキスタンまで逃したんだよっ!
どうやら製作期間がちょうどパンデミックと重なってしまった様なので、もしかしたら当初予定していた通りの物語にならなかったのかも知れない。その点は考慮しつつも、やはりこのストーリーでは満足する事は出来ない。「世界の危機」とか扱わず、ティーン女子の葛藤と成長にだけ焦点を当てたミニマムな物語にした方がドラマの完成度は高まったんじゃないかな。
主人公の心理描写や文化の扱い方は繊細だが、アメコミ的娯楽部分がおざなり。これではいくら新規の客層を狙ったところで、旧来のアメコミファンは離れてしまう。ドキュメンタリー監督を招聘したり、意識の高さは見て取れるのだが、やはり餅は餅屋。まずアメコミの良さを理解している人間を中心に据え、その周辺にムスリム文化に造詣が深い人材を配する。この順番を間違えたせいで中途半端なものが出来てしまったのでは無いだろうか。題材が良かっただけに実に惜しい。
とはいえ、カマラ・カーン/ミズ・マーベルという魅力的なヒロインが誕生したのは寿ぐべき事。キャプテン・マーベルとどの様な関係性を築いてゆくのか等、彼女の今後に期待したい。
主人公はパキスタン系アメリカ人の女の子で、イスラム文化に溢れた映画です。
イスラム文化、パキスタンやインドの事、イギリスとの関係、この辺が知れて良かったです。
ただ、ほとんど高校生の日常で、分かりやすい敵らしい敵との戦いは無いに等しい。
だから、あまり面白くないです(笑)
『マーベルズ』から彼女が本筋に絡んでいくみたいなので観ておいた方がベストでしょうね(笑)