特攻野郎Aチーム シーズン1 : 特集

雇われ傭兵部隊が世界を股にかけ、抱腹絶倒の過激アクションを魅せる

 「ベトナムで鳴らした俺たち特攻部隊は、濡れ衣を着せられ当局に逮捕されたが、刑務所を脱出し地下に潜った。しかし、地下でくすぶってるような俺たちじゃあない。筋さえ通りゃ金次第でなんでもやってのける命知らず、不可能を可能にし、巨大な悪を粉砕する、俺たち特攻野郎Aチーム!」

 80年代に人気を博した「特攻野郎Aチーム」は、こんな羽佐間道夫(ジョージ・ペパードの声)のナレーションで始まる痛快TVドラマだ。シーズンによって、Aチームの一員になる女性はさまざまだったが、主な配役は変わらない。番組冒頭のナレーション解説が4人の男たちの性格や役割を説明する。

 「俺はリーダー、ジョン・スミス大佐。通称ハンニバル。奇襲戦法と変装の名人。俺のような天才策略家でなければ百戦錬磨のつわものどものリーダーは務まらん」(ジョージ・ペパード/声:羽佐間道夫)。「俺はテンプルトンペック(中尉)。通称フェイスマン。自慢のルックスに、女はみんなイチコロさ。ハッタリかまして、ブラジャーからミサイルまで、何でも揃えてみせるぜ」(ダーク・ベネディクト/声:安原義人)。「B・A・バラカス(軍曹)。通称コング。メカの天才だ。大統領でもブン殴ってみせらぁ。でも飛行機だけは勘弁な」(ミスター・T/声:飯塚昭三)。「よぉ! お待ちどう。俺様こそ(H・M・)マードック(大尉)。通称クレイジーモンキー。パイロットとしての腕は天下一品! 奇人? 変人? だから何?」(ドワイト・シュルツ/声:富山敬)。

 MPに追われた札付きの奴らが特攻命令を下されるという発想は、ロバート・アルドリッチ監督の第2次大戦を舞台にした「特攻大作戦」に似ている。しかも、この番組ができた80年前後には「タクシードライバー」や「ディア・ハンター」のような“ベトナム後遺症”映画がたくさんできていたなか、時代に逆行するかのように、暗さを微塵も感じさせず、雇われ傭兵部隊が世界を股にかけ、抱腹絶倒の過激アクションを魅せた。トラブルを愉しんでいる奴らが愉快痛快だった。

 お約束のギャグもいっぱいあった。ハンニバルが指令を受けるとき、必ず中国人“ミスター・リー”になりすます。変装の名人といっても、どう見たってジョージ・ペパードなんだけどね。普段は着ぐるみ俳優で、怪獣の着ぐるみに葉巻がトレードマークだった。

 また、「スパイ大作戦」同様、黒人が天才メカニックなのだが、「特攻野郎Aチーム」の直前、「ロッキー3」(82)でロッキー(シルベスター・スタローン)の宿敵を演じたモヒカン頭でコワモテのミスター・Tが“B・A”バラカンを演じていた。飛行機嫌いというのがミソで、ドラマの導入部では必ず睡眠剤を打って彼を眠らせたりして、あの手この手で彼を“運ぶ”のがおかしかった。

 爆破場面は多かったが、思ったほど殺人場面(たぶん全シリーズ通して4、5人ほど)が少ないのが、痛快さの証だろうか。また、Aチームの活躍を支える車両であるAチーム・バンが意外にカッコよかった。

 そうした痛快作をハリウッドが放っておくはずがなく、ブルース・ウィリス主演で映画化の企画が持ち上がっている(08年公開予定)。亡きジョージ・ペパードの代わりというわけだが、設定も湾岸戦争後ということらしい。なんとも楽しみな企画ではないか。

(佐藤睦雄)

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