栃木・小山の映画館の取り組み「ペア・デー」話題に LGBTカップルにも割引適用

2019年8月23日 12:00


新たな取り組み「ペア・デー」が話題に
新たな取り組み「ペア・デー」が話題に

[映画.com ニュース] 栃木県小山市のショッピングモール、おやまゆうえんハーヴェスト・ウォークにあるシネマハーヴェストウォークと、JR小山駅前の商業ビル・ロブレ内にあるシネマロブレ(http://cinema-ginsei.com)。地元のファミリー層や映画ファンを中心に、人気のシネコンとして知られるこの2劇場で、新たな取り組み「ペア・デー」(毎週金曜)が始まり、地元新聞各紙で「LGBTもカップル割引」と報じられた。そこで、劇場を運営する銀星会館の専務・柳裕淳氏に話を聞いた。

この2劇場では、毎週月曜のメンズ・デー、毎週水曜のレディース・デーなどの割引優待があり、毎週金曜の「ペア・デー」は性別不問で2人組の来客に適用される。これはLGBTのカップルへの配慮から始めたサービスだという。

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「このサービスを始めるきっかけになったのは、2017年に行った全国興行生活衛生同業組合連合会(全興連)青年部主催の勉強会です。LGBTの基礎知識から、性的マイノリティのお客様が映画館にどのようなことを求めているかを考えるために開いた勉強会だったんですが、そのときから“何かを始めよう”と思い始めたんですね。以前から、文化を発信する映画館こそがマイノリティの暮らしをサポートする姿勢を示さないといけないと思っていましたし、お客様側からもそれが当たり前、という感覚を持っていただきたかった。そのためには根本から変えていかないといけません。でも、敢えて“LGBTのためにやってます!”ということを打ち出すと、暗に否定的に受けとめる方もいらっしゃるでしょうし、当事者の方々にも受けとめてもらえないことは勉強会を経てよく分かっていました。そこで、どうすればお客様目線で自然な形でサービスを取り入れられるかを考えました」

ペア・デーは同性カップルであっても、異性カップルでも、友達同士でも使える割引特典。これを同性カップルのみ適用、もしくは性別が分かる証明書や同性パートナーシップの証明書を提示して適用など、あからさまにしてしまうと、当事者にとってはアウティングとなるリスクがある。そこで性別や年齢など限定せず、2人組だったらOKというスタンスにこだわった。

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「以前からペア・デーはあり、それは異性カップルに限定していたんですね。その限定を外し、サービスを刷新するだけのことだったので、こちらとしては手間いらず。ポスタービジュアルに、わかる人はわかるようレインボーのリボンをあしらえ、“We support Diversity(多様性をサポートします)”と明示しました。気になっていたのは劇場のスタッフがどう考えるかということでしたが、このサービスのことを最初に話したときに、スタッフは全員一致で“ぜひやりましょう。やるべきです”と言ってくれました。誰か異論をとなえるかと思ってビクビクしていたので、とても嬉しかったですね」

実際に学生が夏休み中の金曜日のシネマハーヴェストウォークを訪問してみると、ペア・デーの割引適用を受けただろう2人組の客もちらほら。「サービス適用後、動員はのびてます。友達同士でも使える割引優待だからこそ、気軽に利用していただいていますね」と柳氏。「ペア」のあり方も定義づけしないこともダイバーシティ(多様性)を解釈するうえでは大事なことだ。

「弊社は就業規則から多様な生活のあり方をサポートしようと考えています。まずは近々、スタッフの制服を男女を限定しないジェンダレスなデザインにリニューアルする予定です」

さまざまなカップルの形があり、多様な生き方がある現代社会。マジョリティ側から押しつける“敢えてのサービス”ではなく、この2劇場のようなさりげなくマイノリティの生き方を受け入れるサービスのあり方が、今後の劇場の指針になっていくだろう。

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