佐々木昭夫 : ウィキペディア(Wikipedia)

佐々木 昭夫(ささき あきお、1932年 - )は、日本の工学研究者(電子工学)

人物

学位はPh.D.(カリフォルニア大学バークレー校・1966年)および工学博士(京都大学・1976年)。京都大学および大阪電気通信大学名誉教授、ユタ大学 Clyde Chair(招へい教授)。

「混晶半導体」を提唱し、新学術分野に発展に寄与した。「電子材料シンポジウム」を通じて若手人材の育成も行った。

研究歴

研究内容は混晶半導体の物理と光デバイス。

  1. 混晶半導体研究の先駆者
    AlxGa1-xAs、GaAs1-xPx 等では、構成比率xは可変であり、構成半導体のAlAs、GaAs、GaP の性質は保存されており、さらに元素配列に不規則の存在が考えられる。こうした事柄はAlAs、GaAs、GaP、ZnSiP2等の化合物半導体と全く異なるものであり、新しい範疇の半導体とすることを学会等で啓蒙を行い(科研費特定研究混晶エレクトロニクス)、「混晶半導体」と名付けることを提唱した。当初、専門家から異論が唱えられていたが、現在、周知され専門書、教科書にも用いられている。その後、不規則性の存在を示す理論的研究を行った。その内容は、米国大学院の教科書に紹介されている (A. Rockett, The Materials Science of Semiconductors, Springer)。
  2. 不規則超格子の研究
    ミクロの原子配列がマクロの新しい特性を創出することを、超格子の層幅、層電位を不規則にすることにより、発光特性の増大することを示した(三菱財団研究助成)。これは、人工によるAnderson Localizationの実現と考えられている。
  3. 量子ドットの先駆的研究
    GaAs上にInAsを成長させた時にできる凸状の性質を調べ、量子ドットに使用できることを提唱する(結晶成長学会論文賞)。
  4. 光、電子デバイスの直接集積による新デバイスの研究
    ホトトランジスタと発光ダイオードを集積し光増幅機能素子を作製した(電子情報通信学会業績賞)。
  5. 液晶大形表示の研究
    レーザ書込みにより、液晶分子の規則、不規則配列を利用した大形ディスプレイの実演を行った。
  6. シンポジュームの設立
    電子材料シンポジウム (Electronic Materials Symposium, EMS) を設立し、EMS賞を設けた。2019年現在で38回の開催。電子材料関係者に広く討論の場を提供し、若手人材育成に貢献してきた。EMS賞は若手研究者の奨励となっている。

略歴

  • 1951年4月 - 京都大学工学部電気工学科に入学。
  • 1955年3月 - 京都大学工学部電気工学科卒業。
  • 1957年3月 - 京都大学大学院工学研究科電気工学専攻修了。
    • 神戸工業(現デンソーテン)に入社。
  • 1963年2月 - 米国カリフォルニア大学バークレー校電気工学博士課程入学。
  • 1966年1月 - カリフォルニア大学バークレー校 Ph.D.。
  • 1966年3月 - 京都大学工学部助手。
  • 1967年4月 - 京都大学工学部助教授。
  • 1970年4月 - 福井大学非常勤講師、20年間、講義26回。
  • 1976年3月 - 京都大学工学博士。
  • 1977年1月 - 京都大学工学部教授、電気工学科電気応用工学講座担任。
  • 1985年7~12月 - 英国シェフィールド大学客員上級研究員。
  • 1996年3月 - 京都大学を定年退官。同大名誉教授。
  • 1996年4月 - 大阪電気通信大学工学部教授。図書館長、エレクトロニクス基礎研究所長。
  • 1997年3~8月 - 米国ユタ大学Clyde講座招聘教授。
  • 2003年3月 - 大阪電気通信大学定年退職、同大名誉教授。

賞歴

  • 1985年 - 米国情報表示学会長表彰
  • 1987年 - 電子情報通信学会業績賞「光増幅機能素子の研究」
  • 1988年 - Society for Information Display Fellow
  • 1989年 - 米国情報表示学会長表彰
  • 1996年 - 日本結晶成長学会第13回論文賞「InAs/GaAsヘテロエピタキシャル成長」
  • 1997年 - W.W.Clyde Chair Award
  • 2001年 - 電気学会業績賞
  • 2011年 - 応用物理学会第3回化合物半導体エレクトロニクス業績賞(赤﨑勇賞)「III-V族半導体における規則性、不規則性の究明とその応用に関する研究」
  • 2019年 - 第19回応用物理学会業績賞(教育業績)『新学術分野「混晶エレクトロにクス」の創成と若手人材育成への貢献』

主要 著書・編著・監修

  • 編著『液晶エレクトロニクスの基礎と応用』 1979年4月(オーム社)
中国語訳本、『液晶电子学基础和应用』 1985年3月(科学出版社、北京)]
  • 『現代 電子物性論』 1981年3月(オーム社)
  • 『固体電子工学』 1983年1月(コロナ社)
  • 編著『電子デバイス工学』 1985年4月(昭晃堂)
  • 編著『現代 量子力学の基礎』 1985年8月(オーム社)
  • 編著『液晶ディスプレイのすべて』 1993年2月(工業調査会)
  • 『量子効果半導体』 2000年3月(電子情報通信学会)

主要役職歴

1.省庁関連: ◎文部省科学研究費補助金特定研究「混晶エレクトロニクス」研究領域代表 ◎科学技術庁航空・電子技術審議会専門委員 ◎新技術事業団個人研究者選考・推進委員 ◎学位授与機構審査専門委員主査

2.学会関連: ◎米国情報表示学会日本支部長 ◎電子通信学会電子デバイス研究専門委員会委員長 ◎電子情報通信学会エレクトロニクスグループ運営委員長 ◎電気学会情報認識技術委員会委員長 ◎電子情報通信学会副会長

3.国内会議関連: ◎電気学会「センサの基礎と応用」シンポジュウム論文委員長 ◎同上実行委員長 ◎液晶討論会論文委員長

4.国際会議関連: ◎第3回ディスプレイ研究国際会議論文委員長 ◎第9回ディスプレイ研究国際会議運営委員長 ◎日米科学協力日米セミナー「混晶エレクトロニクス」主宰 ◎第6回固体センサとトランジューサ国際会議アジア代表 ◎第7回気相成長とエピタキシー国際会議論文委員長 ◎第7回固体センサーとトランジューサ国際会議論文委員長 ◎米国電子材料会議アジア委員(20年間)

外部リンク

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2024/04/06 12:26 UTC (変更履歴
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