クラウス・キンスキー : ウィキペディア(Wikipedia)

クラウス・キンスキーKlaus Kinski, 本名:Nikolaus Karl Günther Nakszynski, 1926年10月18日 - 1991年11月23日)は、ドイツ人の俳優。長女の、次女のナスターシャ・キンスキー、長男のはともに俳優となった。

来歴・人物

自由都市ダンツィヒのツォポット(現ポーランド)で、薬剤師の子として生まれた。父親はポーランド系の血を引くドイツ人Davidson, John E. Deterritorializing the New German Cinema, Regents of the University of Minnesota, 1999, p. 80。4歳の時、一家でドイツ本国ベルリンに移住。第二次世界大戦にドイツ兵として従軍した後に演技の道に進み、舞台でシェイクスピアやフランソワ・ヴィヨンを朗読するなどしていた。

なかでも公演の際は、ステージ上で政治的発言や、観客に対しての過激な言動をするなど、その特異な個性は映画界進出後も変らなかったという。映画デビューは1948年。1950年代から1960年代は主に戦争映画やマカロニ・ウェスタンやエドガー・ウォーレス原作映画などに出演。

1955年、ルートヴィヒ2世を描いた本国版の旧西ドイツ映画『ルートヴィヒ2世 - ある王の栄光と没落』2007年、東京のアテネ・フランセ文化センターで開催された「ヘルムート・コイトナー(Helmut Käutner)監督特集」の中で日本語字幕付きでDVD上映された。アテネ・フランセ 2007年1月・2月・3月上映スケジュール,ゲーテ・インスティトゥート公式HPでの紹介(カラー作品)でルートヴィヒ2世の弟であるオットー1世を演じた。撮影は前年の1954年8月3日にクランクインし、約3ヶ月後の11月11日にクランクアップした。

その後ヨーロッパで活躍するが、特にヴェルナー・ヘルツォーク監督の5本の作品が有名である。ニュージャーマンシネマ(ドイツにおけるニューシネマ)の旗手として注目され始めていたヘルツォークの出世作とも言える1972年の『アギーレ/神の怒り』における狂信的な英雄像をキンスキーは体現。これにより以前までのキャラクターとは全く異なる変貌を遂げる。この後は社会的問題作を量産し、一筋縄ではいかない性格俳優として君臨してゆく。

だが撮影現場では常にスタッフ、監督はじめ撮影地での現地住民たちとも衝突。数多くの争いの火種を生み、痛烈な批判を浴びた事でも知られる。そんな環境下にありながらも、対立、確執を繰り返しながらおびただしい数の作品に主演。ヘルツォークとは『フィツカラルド』(1982年)、『コブラ・ヴェルデ』(1987年)といった芸術的傑作を晩年まで作りつづけた。

こうした厳格かつ熱狂的な個性を逆手に取り、オカルトやサイコスリラーをテーマとした作品においての強烈な犯罪者や悪役にもしばしば登場した。『上海異人娼館 チャイナ・ドール』(1982年)では大野美雪と本番行為を演じ話題となった。1989年の『パガニーニ』では監督も務めている。

1972年以降の代表作に『ノスフェラトゥ』、『バンパイア・イン・ベニス』(ともに吸血鬼役)、『アンドロイド』、『スター・ナイト』、『クリーチャー』、『クロール・スペース』などが日本でも知られる。

日本語吹き替えは主に千田光男寺島幹夫が担当した。

娘に対する性的虐待と小児性愛告白

長女のポーラ・キンスキーを、5歳の頃から14年間に渡って繰り返しレイプしていたと、死後に発行された長女の自伝で指摘されているクラウス・キンスキーの長女が父親からの性的虐待を告白 映画.com 2013年1月13日。

次女のナスターシャ・キンスキーも、4~5歳のときに体を必要以上に触られたり、強く抱き締められたりした。ナスターシャは、「愛情に満ちた父親の抱擁ではなく、それ以上のものだと直感した」と発言している父の性的虐待恐れていた 女優のナスターシャ・キンスキーさん告白 MSN産経ニュース 2013年1月14日。ナスターシャは、父が今も生きていれば「彼を監獄に送り込むために何でもする」と語っているナスターシャ・キンスキーが告白「父の性的虐待恐れていた」― スポニチ Sponichi Annex 芸能

ドイツのビルト紙によると、クラウス本人も、1975年に出版した自叙伝の中で、自身の小児性愛を告白し、長女のポーラが3歳くらいのときに売春宿に連れて行ったこと、17歳の少女の前で、未成年のその妹と性的関係を持ったことを記述し(のちに本書から削除された)、1985年のテレビ番組内では、「少女と性的関係を持てばここでは有罪だが、結婚が認められる国もある」などと発言したAFP、2013年01月14日。

主な出演作品

公開年邦題 原題役名備考
1955 ルートヴィヒ2世 - ある王の栄光と没落Ludwig II. – Glanz und Elend eines Königs オットー1世
1958 愛する時と死する時A Time to Love and a Time to Die ゲシュタポ
1962 黒い鮫Das Gasthaus an der Themse スティーヴ
1962偽の売国奴ユダヤ人の若者
1964 大酋長ウィネットーWinnetou - 2. Teil ルーク
1965 夕陽のガンマンPer qualche dollaro in più ワイルド
ドクトル・ジバゴ Doctor Zhivago Kostoyed
1966 イスタンブールEstambul 65 Schenck
メキシコ行き2枚の切符Das Geheimnis der gelben Mönche Caporetti
群盗荒野を裂く El Chuncho, quién sabe? エル・サント
1967 美人殺人部隊The Million Eyes of Sumuru President Boong
1968 裏切りの荒野 L' Uomo, l'orgoglio, la vendetta ミゲル・ガルシア
不死身のコプランCoplan sauve sa peau Theler
殺しが静かにやって来るIl grande silenzio Tigrero/ロコ
バスタードI Bastardi アダム
1969 戦場のガンマン5 per l'inferno ハンス・ミュラー
マルキ・ド・サドのジュスティーヌMarquis de Sade: Justine マルキ・ド・サド
ビーナスの誘惑/美しき裸身の復讐Paroxismus Ahmed Kortobawi
栄光の戦場Il Dito nella piaga ブライアン・ハスキンス/ノーマン・カー
1970 吸血のデアボリカNachts, wenn Dracula erwacht レンフィールド
大爆破/特殊命令!ナチに潜行せよI Leopardi di Churchill ホルツ
ザ・ビーストLa Belva ジョニー・レスター
1971 スローター・ホテルLa Bestia uccide a sangue freddo フランシス・クレイ
ガンマン無頼/地獄人別帖La Vendetta è un piatto che si serve freddo プレスコット
1972 アギーレ/神の怒りAguirre, der Zorn Gottes ロペ・デ・アギーレ
1973 欲情の血族La Morte ha sorriso all'assassino Dr. Sturges
暗殺の掟La Mano spietata della legge ヴィト・クアトローニ
荒野のドラゴンIl mio nome e shanghal joe ジャック
1976 バイオスパン/暗黒の実験Lifespan ニコラス・ウルリッヒ
ミスター・ノーボディ2Un genio, due compari, un pollo フォスター
1976 柔肌Jack the Ripper デニス・オーロフ/切り裂きジャック
マダム・クロード Madame Claude Alexander Zakis
1977 サンダーボルト救出作戦Mivtsa Yonatan ウィルフレッド
チェイサーMort d'un pourri ニコラス・トムスキー
1979 ノスフェラトゥNosferatu: Phantom der Nacht ドラキュラ伯爵
ヴォイツェクWoyzeck ヴォイツェク
キラー・トラックHaine Le motard
1980 スキゾイド Schizoid Pieter Fales
1981 上海異人娼館 チャイナ・ドールLes Fruits de la passion サー・ステファン
恐るべき訪問者・ヴェノム/イートン街の殺人Venom ジャック・ミュラー
新・おかしな二人/バディ・バディBuddy Buddy ヒューゴ・ザッカーブロット
1982フィツカラルドFitzcarraldo フィツカラルド
ザ・ソルジャー The Soldier Dracha
アンドロイドAndroid ダニエル博士
1983 フェアリーテール・シアター/美女と野獣Faerie Tale Theatre 野獣 テレビシリーズ
1984 狼どもの戦場Geheimcode: Wildgänse チャールトン
リトル・ドラマー・ガールThe Little Drummer Girl マーティン・クルツ
1985 クリーチャーCreature ハンス
コマンドー・レオパルドKommando Leopard シルヴェイラ
スター・ナイトEl Caballero del dragón Boetius
1986 マクブライドの復讐Revenge of the Stolen Stars ドナルド・マクブライド
クロール・スペースCrawlspace カール・ガンサー
1987 タイム・ソルジャー/時の侵入者Timestalkers ジョセフ・コール テレビ映画
コブラ・ヴェルデCobra Verde Francisco Manoel da Silva/コブラ・ヴェルデ
1988 バンパイア・イン・ベニス Nosferatu a Venezia ノスフェラトゥ
1989 パガニーニKinski Paganini パガニーニ 監督・脚本・主演
1999 キンスキー、我が最愛の敵Mein liebster Feind - Klaus Kinski ドキュメンタリー

なお2004年公開の映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』においてクラウス(テロップでは変な顔の男)という彼をモデルにしたキャラクターが登場する。

外部リンク

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