中川五郎 : ウィキペディア(Wikipedia)

中川 五郎(なかがわ ごろう、1949年7月25日 - )は、1960年代後半から活躍するフォークシンガー、訳詞家、音楽評論家、小説家、エッセイスト、翻訳家。ノーベル文学賞受賞者であるボブ・ディランの訳詞を全て手がけた。

略歴

1960年代後半、フォークミュージックのムーブメント「関西フォーク」の中で活動を開始した。

1967年3月、当時、大阪府立寝屋川高等学校の3年生であった中川はベトナム反戦講演会に参加。ゲストで来ていた高石ともやの歌に衝撃を受けた。1967年7月29日、中川は、高石やザ・フォーク・クルセダーズが参加した、第1回関西フォークキャンプ(京都・高雄)で歌唱した。

1967年、ボブ・ディランの「ノース・カントリー・ブルース」に、受験生を題材にしたオリジナルの詞をつけた「受験生ブルース」を制作する。その後1967年~1968年にかけて曲を付け替えてレコード化しようと言う話が持ち上がり、中川自身もURCレコードの秦社長に「新たな曲を付けないか?」と言われるが、結局高石友也がコミカルなメロディーをつけ歌ったものがレコード化されヒットした。中川は「帰って来たヨッパライ」に似たテープの早回し等も入っていて、最初に聞いたときは二番煎じで恥ずかしいと思ったが、一方で「あぁ言う風にしたからヒットしたと思う」とも。

1969年4月、小室等のグループ六文銭とのカップリングアルバム『六文銭・中川五郎』でURCレコードからデビューする。「殺し屋のブルース」「うた」など数多くの作品がフォーク・ゲリラのレパートリーになった。このレコードは六文銭の面が45rpm、中川の面が33rpmという変則な規格であった。

中川は、政治性やメッセージ性だけを意識していたわけではなく、第4回関西フォークキャンプ(1969年8月15日)打ち上げコンサート(京都市の円山公園野外音楽堂)では、恋愛歌であるエリック・アンダースンの「恋人よベッドのそばにおいで」を歌っている。

1969年11月『終り、はじまる』をリリース。

1970年に「歌手廃業」を宣言し、URCの機関紙『フォークリポート』の編集者となるが、その最初の号「冬の号」がわいせつ容疑で押収され、中川はわいせつ文書販売同所持事件の被告人となり、裁判は7年続く。その内容は中川の著書『裁判長殿、愛って何?』に詳しく書かれている。

この「フォークリポートわいせつ裁判」で1970年代前半を棒に振り、1976年妻・青木ともことの生活や愛猫の死などを描いた傑作アルバム『25年目のおっぱい』をリリース。だが、1978年『また恋をしてしまったぼく』(ベルウッド・レコード)を最後にアルバムリリースが四半世紀途絶えることとなる。

フォーク冬の時代と呼ばれた1980年代には、雑誌『BRUTUS』の編集を担当。また、音楽評論家、ロックの訳詩家、チャールズ・ブコウスキー等の先鋭的な文学作品の翻訳家として知られるようになる。

2004年に、詩人片桐ユズル作詞の2曲を含む新作『ぼくが死んでこの世を去る日』がoff noteからリリースされた。また、2006年にはシールズ・レコードから『そしてぼくはひとりになる』をリリース。なお、デビュー当時から、歌手廃業宣言時期を除き、現在にいたるまで地道にライヴ活動を続けている。

また、フォークキャンプ、中津川フォークジャンボリー、春一番コンサート、ホーボーズコンサートなど多くのイヴェントの音源が残されており、中川の活動の一端を窺い知ることができる。また、「田舎五郎と魚」、「ヴァギナ・ファック」などのグループも、編成していた。

近年はセンチメンタル・シティ・ロマンスの中野督夫、アナーキーの寺岡信芳(Bs)、永原元(Ds)とバンド「To Tell The Truth」を結成し、全国ツアーを行うなど、活発に活動を行っているほか、2015年にライブCD『Live at BB Street』を発売。これにも収録されているピート・シーガーの日本語カバー「腰まで泥まみれ」を元ちとせがカバーアルバム『平和元年』でカバーし、日本レコード大賞企画賞を受賞。

中川は他に、洋楽の訳詞や、解説の執筆もしている。キング・クリムゾンの"レッド"など。

2017年にはC.R.A.C. Recordingsから「トーキング烏山神社の椎ノ木ブルース」をリリースしている。

エピソード

オックスの岡田志郎(本名は史郎)とは中学時代の同級生であり、二人は史郎、五郎として有名人であった。

沢知恵がアルバム『いいうたいろいろ2』で「三十才の子供」を、アルバム『わたしが一番きれいだったとき』で「自分の感受性くらい」、【アルバム『一期一会㈼』で「消印のない手紙」、アルバム『われ問う』で《愛情60》】をカバーしている。

ディスコグラフィ

シングル

発売日規格規格品番タイトル作詞作曲
URCレコード
1969年10月EPURS-0015A殺し屋のブルース西尾志真子中川五郎
Bうた山内清
1969年12月EPURS-0020A腰まで泥まみれPete Seeger訳:中川五郎中川五郎
B恋人よ ベッドのそばにおいでEric Andersen訳:日高仁Eric Andersen
キングレコード
1972年3月EPBS-1496A俺とボビー・マギーF.Foster、K.Kristofferson訳:中川五郎F.Foster、K.Kristofferson
Bミスター・ボージャングル

アルバム

発売日レーベル規格規格品番アルバム備考
URCレコード
1969年4月URCレコードLPURL-1002六文銭・中川五郎六文銭#それから……# 夕暮# 時は流れて# あげます# 五年目のギター# うた中川五郎# 主婦のブルース#恋人よベッドのそばにおいで# カッコよくはないけれど# 自由についてのうた# コール・タトゥー# 殺し屋のブルース# 腰まで泥まみれ
1995年6月16日EMIミュージック・ジャパンCDTOCT-8956
2002年9月11日avex ioCD14.に(エンハンスド)CD-EXTRA仕様
1969年11月URCレコードLPURL-1010終り はじまるA面#古いヨーロッパでは#殺し屋のブルース#いつのまにか#主婦のブルース#死んだ息子が返って来たから#あなたがもう笑えないからB面#うた#かえるそのとき#自由についてのうた#俺はヤマトンチュ#腰まで泥まみれ#終わるボーナストラック#腰まで泥まみれ(Single ver.)#恋人よベッドのそばにおいで(Single ver.)#主婦のブルース(オープニング・コンサート1969.3.26より)#腰まで泥まみれ('69プロテスク・ソング大会 1969.4.1より)#殺し屋のブルース(メッセージ・コンサート 1970.1より)
1977年URCレコードLPUX-8029
1989年9月25日ポリグラムCDH20K-25026
1995年12月6日EMIミュージック・ジャパンCDTOCT-9291
2003年3月5日avex ioCDIOCD-4004613.に(エンハンスド)CD-EXTRA仕様
2017年4月26日グリーンウッド・レコーズCDGRCL-6069ボーナストラック5曲を追加
フィリップス・レコード
1976年1月25日フィリップスLPFW-500725年目のおっぱい光りのない時代だけど#みなもと# 祝婚歌# いまはこんなに元気でも# 夜はおちて行く# トカゲうまれてくるひとのため#25年目のおっぱい# ともこのまぶたにはとさんがとまった# 水と光# 27年目のおっぱい# まがり
1988年12月21日徳間ジャパンコミュニケーションズCD
2013年8月7日CDデジタルリマスター版
ベルウッド・レコード
1978年5月21日キングレコード・ベルウッドLPまた恋をしてしまったぼく~Fall in Love AgainA面#十代から十年# 夜盗のように(Run Like a Thief)# また恋をしてしまったぼく# 娘よ俺はおまえの親父だB面# かぎりなく# 動物たちの恐しい夢のなかに# 三十歳の子供# ミー・アンド・ボビー・マギー(Me and Bobby McGee)
1991年7月21日キングレコードCD
2012年10月3日CDデジタルリマスター版
off note
2004年4月25日off noteCDIND-050434ぼくが死んでこの世を去る日# ぼくの遺書# いつも 戸口までだったね# 男の陰に女あり# 90センチ# 自分の感受性くらい# 湖のほとり# わかれ# 眠られぬ夜# ぼくが死んでこの世を去る日# ミスター・ボージャングル
シールズ・レコード
2006年10月30日シールズ・レコードCDIND-06462そしてぼくはひとりになる# 父の日# はなれていれば思いはつのる# おかえりなさい# きみがいなけりゃ# 恋人のように# 寂しい夜のオルゴール# 26年目の*****# 水に流せば# 今夜きみはどこにいるの# サンタは家には帰れない# そしてぼくはひとりになる
コスモスレコーズ
2017年1月25日コスモスレコーズCDどうぞ裸になって下さい - ライヴ2枚組[Disc1]#運命 運命 運命#言葉#愛情60#しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん#イマジン#どうぞ裸になって下さい#90センチ#真新しい名刺[Disc2]#Sports For Tomorrow#二倍遠く離れたら#消印のない手紙#一台のリヤカーが立ち向かう#1923年福田村の虐殺#風に吹かれ続けている

参加作品

To Tell The Truth

  • 『Live at BB Street』(2015年)- 中川五郎(Gt、Vo)、中野督夫(Gt)、寺岡信芳(Bs)、永原元(Ds)

著書

自伝

小説

エッセイ集

翻訳

関連項目

  • 対レイシスト行動集団
  • 野間易通
  • ヘイトスピーチ
  • 差別
  • 正義
  • バブル景気

注釈

出典

外部リンク

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2023/11/11 19:47 UTC (変更履歴
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