 落下傘部隊の将校に恋した姉、
知的障害がある気のいい兄、
小さな町を飛び出した気弱な弟――。
待ち望んでも開かない孔雀の羽の様に、
皮肉な運命に家族は揺れ、
そしてまた寄り添っていく。
1977年、人々は手にした事のない
自由を持て余し、
迷いながら、歩きはじめた。
1977年、11年続いた文化大革命が終わり、ケ小平(トウショウヘイ)は中国の新しい復興への道を歩み始めた。しかし、地方の小都市で暮らす普通の庶民たちには、どんな変化があったのだろう。
『孔雀 ―我が家の風景―』の舞台になった町は特定されていないが、1つの決まったパターンをもったどこにでもある中国の田舎街である。散歩に出ればすぐに親しい人の顔に出会うメインストリートがあり、2、3の劇場があり、二流の一座の踊りと、地元の京劇の2本立て。何件かの工場、郵便局、病院とデパートが1つずつ。そして、そこかしこに路地裏で食卓を囲む家族の風景がある。実在の都市で例を上げれば、邯鄲(かんたん)や、自貢(じこう)、蚌埠(ぼうふ)、保定(ほてい)といった街はすべて似ている。
こうした中国の田舎町を舞台に、こわれかけ、離れてはまた寄り添いながら暮らしていくある一つの家族の愛の年代記――それが『孔雀 ―我が家の風景―』である。
「多くの中国の人々はこういう街で成長し、やがて去っていく。そして出て行くことができないと嘆息する青春の胸のうちを描きたかった。私がそうであったように。」
 こう語る監督のチャンウェイは、本作で監督デビューするまでは世界的な撮影監督として多くのキャリアを積んできた。チャン・イーモウ、チェン・カイコー、ジャン・ウェンなど中国を代表する監督の他、ロバート・アルトマン監督の『相続人』(97)でも撮影を担当している。また、チェン・カイコー監督の『さらば、わが愛/覇王別姫』(93)ではアカデミー賞撮影賞にノミネートされている。
11年続いた文革が終った1977年から物語を始め、解放後の時代の中の一つの家族のスケッチとして描かれるのは、頭上で変化していく大きな政治のうねりとは無関係な人々の感情の細やかさである。人々は自由をもてあまし気味に、おずおずと歩き始める。そんな時代背景の中に浮かび上がる、ある家族の肖像なのだ。
本作は第55回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞し、世界中の賞賛を浴びた。長編処女作でこの快挙を成し遂げたチャンウェイは、今後、注目される監督の一人といえるだろう。本作で本格的な映画女優としてデビューしたチャン・チンチューは、自由に憧れる一家の長女役を瑞々しく演じている。彼女は中国で大ヒットしたツイ・ハーク監督『セブンソード』(05)のヒロイン役にも大抜擢され、ポスト“チャン・ツィイー”の呼び声も高い。
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