香港出身の俳優ウィル・オー「ハイキュー!!」が人生の指針に「『“その瞬間”が有るか、無いかだ』は凄い名言」

2024年4月9日 18:00


ウィル・オー
ウィル・オー

アジア全域版アカデミー賞「第17回アジア・フィルム・アワード」(以下、AFA)では、Youth Ambassador(ユース・アンバサダー)として、アジアの国と地域から4人の若手俳優を迎えた。宮沢氷魚が日本人として初めて就任し、「1秒先の彼女」「オールド・フォックス 11歳の選択」のリウ・グァンティン(台湾)、「ミウの歌 Love of Siam」「愛しのゴースト」のマリオ・マウラー(タイ)も抜擢。そして、香港からは若手実力派俳優のウィル・オーがYouth Ambassadorとして、さまざまなイベントに出席しAFAを盛り上げた。

香港出身のウィル・オーは、2016年に俳優デビュー。「縁路はるばる」「香港の流れ者たち」といった話題作に出演し、台湾の巨匠チェン・ユーシュン監督の新作「大濛(原題)」の主演も務めた逸材だ。

映画.comは、香港で行われた授賞式の当日(3月10日)にウィル・オーへのインタビューを実施。自身の経歴、日本文化からの影響、香港映画界への思いなどを語ってもらった。(取材・文/徐昊辰


――まずは、日本の皆さんに自己紹介をお願いできますか?

皆さん、こんにちは。私は香港出身の俳優ウィル・オーと申します。2016年から俳優デビューし、最初に出演した映画は「点五歩」という野球映画です。日本は野球大国ですよね。いま大谷翔平さんが本当に凄いです。2021年「香港の流れ者たち」に出演し、作品も多くの方々に評価され、私自身も大きく成長したと感じました。これからも色んな映画作品に挑戦したいと思います。

――Youth Ambassadorに選ばれました。今の率直なお気持ちをお聞かせください。

非常に光栄に思っています。ほかのアジアの俳優と一緒に、アジア・フィルム・アワードに参加することができてとても嬉しかったです。氷魚、マリオ、グァンティンとも会いました。皆さんは本当にいい人ですね。アジア・フィルム・アワードもかなり温かい雰囲気ですし、香港映画界も徐々に復活しているなと改めて感じました。

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――俳優になったきっかけを教えていただけますか?

香港城市大学で学んでいた頃には、映画の裏側に入りたいと思っていたのですが、偶然、先輩の卒業制作に出演することになりました。遊びにいくような気持ちで参加したのですが、とても楽しめました。特に監督が「カット!」と言った時――なぜかその時の感覚が非常に不思議で、鳥肌が立ったんです。それがきっかけで俳優になることを決めました。その“鳥肌”をもう一度体験したかったから。漫画「ハイキュー!!」を読んだことはありますか? 木兎光太郎が、月島蛍に「“その瞬間”が有るか、無いかだ」と言っています。これは、凄い名言です。この感じなんです!

――いま「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」が日本で上映中ですね。

とても見たいです!! 去年の「THE FIRST SLAM DUNK」も、本当に素晴らしすぎて……“あの瞬間”は永遠に忘れません。その時、井上雄彦先生のインタビューも読んだのですが、ぜひ「バガボンド」も井上先生に撮ってほしいと思いました。

話を戻しますが、「ハイキュー!!」は私の人生にかなりの影響を与えています。「ハイキュー!!」から色々なことを学びました。決して説教臭い作品ではなく“人生とは何か”を教えていただきました。チェン・ユーシュン監督の「大濛」は時代劇の大作なのですが、かなりのプレッシャーを感じていました。そんな時に「ハイキュー!!」を読んで、自分をリラックスさせていました。

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――「香港の流れ者たち」も、ウィルさんに大きな影響を与えましたね。

香港の流れ者たち」についてお話するなら、まずは「ワン・モア・チャンス」(チョウ・ユンファ主演作)という作品について話をさせていただきたいと思います。2018年に撮影した作品ですが、私の俳優人生にとって大きな影響を与えました。「ワン・モア・チャンス」に参加するまで、私が出演した作品はほとんどが学生映画でした。チョウ・ユンファ主演の映画に出演するなんて、当時は考えたこともなかった。その現場で、先輩たちの素晴らしい演技を“盗みました”。かけがえのない経験でした。

そこから1年後、「香港の流れ者たち」の現場に入りました。本当に好きな脚本でした。静かな怒りというものが、とても繊細に描かれている物語でした。私が演じたモクというキャラクターはとても独特な雰囲気だったので、挑戦してみたかったんです。実際に演じてみると、監督からは「演じるというより、そのままの君じゃないか」と評価されました。考えてみれば、確かに私とモクには近い部分がありました(笑)。

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――近年、香港映画界は大きく変わっています。従来のようなアクション映画は少なくなっていますが、作家性の強いインディーズ作品が増えています。才能あふれる若手の監督も多く登場していますよね。若手俳優として、いまの香港映画界についてどのように思っていますか?

80年代~90年代の香港映画界は本当に凄かったですね。あの時の香港は、経済が飛躍的に成長していて、どの業界も絶好調でした。ただ、映画は“食べること”や“住むこと”とは異なり、必須ではありません。あくまでもエンターテインメントなので、経済が停滞すれば、その人気もどんどんと落ちてきました。

多くの人々が映画業界から離れました。でも、逆に言えば、残った人々は本当に映画を愛している方々。業界のために何でもやる人たちですね。だからこそ、皆が香港映画のために、必死に頑張りました。近年の香港社会の変化も激しいため、映画監督たちは自分が見たもの、感じたことを、1人の作家として描き出しています。我々俳優も彼らを全面的にサポートし、良い作品が作れるように頑張りたいと思います!

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――アジア・フィルム・アワードには、毎年多くのアジア映画人が集まっています。好きなアジア映画はありますか?

昨年の好きな作品はダントツで「ケイコ 目を澄ませて」(三宅唱監督)です。シンプルな物語を、ここまで素敵な映画に仕立て上げるとは……! 音がないのに音があるようで、私たちの生活を美しく撮っています。三宅唱監督は、まだ39歳なのですね。あの落ち着きっぷりは、もはや巨匠レベルだと思います。

日本映画の中で描かれている“生活感”も非常に好きです。濱口竜介監督の「偶然と想像」――特に3つ目のエピソード(「もう一度」)が好きですね。10年前、是枝裕和監督の「海よりもまだ深く」をカンヌで見ましたが、これも非常に素晴らしい作品でした。

――最後に、日本の印象を教えていただけますか?

最近は日本に行けていないのですが、昔は頻繁に行っていました。北海道から東京へ、在来線で旅したことも。特に青森エリアの五能線に感動しました。都市より小さい町が好きですね。来年、また日本に行きたいです。いつか日本の映画人とも一緒に映画を作りたいと願っています。

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