柴田元幸氏、字幕を担当したドキュメンタリー「写真家ソール・ライター」を語る

2015年11月18日 12:00


イベントに出席した柴田元幸氏
イベントに出席した柴田元幸氏

[映画.com ニュース] 伝説の写真家の半生を追ったドキュメンタリー「写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと」のイベントが11月17日、東京・青山ブックセンターであり、日本語字幕を担当した米文学研究者で翻訳家の柴田元幸氏が作品を語った。

1940年代からニューヨークを写した芸術的なカラー写真を発表し、有名ファッション誌の表紙も手がけるなど、人々を魅了する写真を撮りながら、名声から距離を置いた写真家ライターの晩年に迫ったドキュメンタリー。2006年にドイツのシュタイデル社から初の作品集が出版され、パリのアンリ・カルティエ=ブレッソン財団では初の個展も開かれた。

ポール・オースターをはじめとした現代アメリカ文学の翻訳で知られる柴田氏は、「ライターの写真を見て、すぐやりたいと思った」と字幕翻訳のオファーを受けたきっかけを明かす。実作業については「ライター独特の語り口を表現した」といい、1シーンの文字数が制限され、エクセルシートで担当者とやりとりする字幕翻訳の経験を「とても勉強になった」と振り返った。

ベニヤ板の隙間からニューヨークの街角を写すなど、独特の構図が特徴のライターの作品に「覗き見的だが、陰鬱な感じがしない」と感想を述べる。「私はたいした人間じゃない、映画にする価値などあるもんか」「有名人を撮るよりも雨にぬれた窓を撮る方が興味深い」と語り、成功や名声を望まないライターの人柄を「アメリカというサクセスが重要な町で、知られていないことがよいというまれな感性」と評し、「(絵本作家の)エドワード・ゴーリーのように、時流に関係のないことをしていて、時代が追いついたかっこいいパターン」とその生きざまを称えた。

またライターが「人が真剣に考えることの中には、そんなに重大ではないことが多い」と語るシーンについて、柴田氏が尊敬するという岸田秀氏と村上春樹氏もかつて同様の発言をしていることに触れ「そういう風に言える精神的な強さがほしい。その(ライターの)言葉に勇気づけられる。ある意味では自己啓発映画」と語った。

また、現在柴田氏はジェームズ・フランコ監督、主演で映画化される、米作家スティーブ・エリクソンの小説「Zeroville」の翻訳を手掛けており、スキンヘッドに「陽のあたる場所」のモンゴメリー・クリフトエリザベス・テイラーのタトゥーを入れた主人公宅に、映画ファンの泥棒が侵入した一場面を朗読し観客を喜ばせた。

写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと」は12月5日シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

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