劇場公開日 2023年7月21日

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「理不尽の中、表現する喜びを捨てない人」裸足になって 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5理不尽の中、表現する喜びを捨てない人

2023年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

『パピチャ 未来へのランウェイ』のムニア・メドゥール監督は、表現する人を描きたい人なんだろうと思う。前作はアルジェリアで弾圧の中、ファッションデザイナーを目指す女性たちの戦いを描いていたが、今回はダンサー。彼女は男に階段から突き落とされ踊ることができなくなり、声も出せなくなった。さらに自由を求めた親友は、国からの脱出の時に命を落とす。それでも彼女は生きること、輝くことを諦めない。ろう者の団体との出会いによって踊りを教えることになる彼女は、新たな仲間と新しい人生を築いていく。
アルジェリアの内戦とテロの傷跡が癒えてない社会を背景にしており、不正がはびこり罪を犯した男は罰せられることはない。女性にとってどこまでも理不尽な環境への怒りはあるが、メドゥール監督はそれよりもその理不尽に負けない主人公の気高さを描くことを優先する。
『パピチャ 未来へのランウェイ』に続いてリナ・クードリが素晴らしい演技を披露している。彼女にはこれからも注目していきたい。

杉本穂高