劇場公開日 2023年2月17日

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「音楽に合わせてモンタージュされる、花、花、花。ジョージアへの郷土愛あふれる「花の映像詩」。」珍しい花の歌 じゃいさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0音楽に合わせてモンタージュされる、花、花、花。ジョージアへの郷土愛あふれる「花の映像詩」。

2023年2月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

音楽に合わせて、花の静止画像が踊る。
シュヴァンクマイエルの『博物誌(組曲)Historia naturae (Suita)』のような、小粋な短編。

冒頭はちょっと『カルミナ・ブラーナ』のような原語歌詞の合唱に乗せて、コーカサスの山岳地帯の高山植物(ノコギリソウ、イチヤクソウ、アザミ、ケイトウなど)を牛の映像とともに。

その後、まずショパンの「軍隊ポロネーズ」に乗せて、温室内の花(バーベラ、グラジオラス、バラ、ダリアなど)がモンタージュされる。続いて、ジョージアの民族音楽に乗せて、高齢の庭師が働く様子と、彼が多肉植物でつくった飾りつけや押し花の数々を映し出してゆく。
夜の花々。朝の花々。そして、――野の花々。

ジョージアの花は、どこか親近感のもてるものが多い。
アイリス(西洋アヤメ)やオトギリソウ、オダマキ、コゴメソウなど、日本でも見かける野草が多く出てくるからかもしれない。

この花の競演がもつ真の意味が明らかになるのは、民族音楽が鳴りひびくなかで、花々が草刈り機によって粉々に破壊される映像が繰り返されたときだ。
すなわち、ここでの「花」はジョージアの文化、ジョージアの大地、ジョージアの人々自身の象徴なのだ。
ソヴィエトの農地政策と近代化政策によって「踏みにじられ」「破壊される」ジョージアの豊かな文化と自然。その悲劇は、何千年にもわたってジョージアを襲ってきた蹂躙の歴史の延長にある。

整地され、アスファルトで固められる大地。
それでも、ジョージアの「花」は負けない。へこたれない。
不屈の復活力で、また種をとばし、芽を出し、花を咲かせる。
道ばたの亀裂から、彼らはまた立ち上がるのだ。

これは、花に託したイオセリアーニの「ジョージア賛歌」に他ならない。

じゃい