劇場公開日 2022年9月16日

「ぎこちない父と娘」手 sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ぎこちない父と娘

2024年2月27日
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鑑賞方法:VOD

この映画を観終わったばかりは、自分の中では低かった評価が、1日経って色々と反芻している内に、どんどん高まってしまった不思議な映画。

はじめは「娘が“父”をどう理解して受け止めていくかという物語」かと思っていた。
でも、主人公の振る舞いは、そこを出発点にはしていない。
20才の頃、飲み屋でおじさんに声をかけられて、きっとそれで引いてしまう人も多いだろう中、彼女はおじさん観察へと突き進む。
側から見ると「何してるの?何が目的なの?」と怪しまれそうなところを、彼女は平気でおじさんと付き合ったりする。世間からどう見えているかではなく、自分発信の価値観が行動基準なんだろう。

きっと彼女は、様々な人(おじさんが多かったけど)と関わることで、自分を知ろうとしていたつもりだったんだと思う。けれど、そのうちに「ああ、私がおじさんに興味を持っていたのって、お父さんを知りたかったからなんだ」と気がついたのだ。たぶん。

途中で「手は嘘をつく」という言葉が出てくる。
主人公の最初の記憶である父親の抱っこ。あの手に感じた父の愛情は嘘だったのか…。そんな思いから出てきた言葉なのではと思わされた。

それにしても、「この父娘の間に過去何があったのだろう」といぶかしく思うくらい、ぎこちない2人。でも、きっと特別な何かがあったわけじゃないんだろうなとも思う。
思春期になると、娘は父親に嫌悪感を抱くと一般的に言われているが、そういう「一般的な父娘関係」を意識し過ぎて(しかもどちらも人間関係が苦手という意識があるので)、傷つき傷つけるのを避けようとして近寄れなくなった2人に見えた。

ロマンポルノナウというくくりの中で作られた映画らしく、エロいシーンも盛りだくさん。けれど、しっかり人間が描かれている。

初恋の彼も、元同僚の彼も、出てくるおっさんたちも、みんなしょうもない。けど、そのしょうもなさに少しホッとする。
そんなところが、やっぱり松居大悟らしいなぁと思った。

sow_miya