劇場公開日 2023年12月22日

「柔らかくもじっくり丹念に描かれゆく芸術家の心理と日常」ショーイング・アップ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0柔らかくもじっくり丹念に描かれゆく芸術家の心理と日常

2023年12月29日
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ライカート監督が”芸術家”の心理と日常に迫った物語。気心知れたミシェル・ウィリアムズを主演に据え、オレゴンの美術大学に勤務しつつ、自らも個展開催に向けて作品作りを進める彫刻家の姿を柔らかな筆致で描いていく。現代を舞台にしてはいるものの、ストーリー展開のスピードやじっくりと内面に寄り添う感覚は前作「ファースト・カウ」とさほど変わらない。むしろそのリズムとテンポをあらかじめ知った上で臨んだほうが、ライカートの構築する世界に抗うことなく身を浸せるのかも。かく言う私は今回もこの監督の眼差しに心酔させられた。とりわけ主人公がホン・カウ演じる天才肌の芸術家に対して苛立ちと憧れという二律背反の感情を抱く様や、美大の日常、さらには芸術一家の宿命的な情景にも魅了されることこの上なかった。傷ついた鳩はまるで自らの内面を取り出し客観視したかのようなメタファー。その仕掛けも相まって終着地はとても清々しく心地よい。

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牛津厚信