「ニコールはルーシーにあまり似ていない。でも他の味わいが」愛すべき夫妻の秘密 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ニコールはルーシーにあまり似ていない。でも他の味わいが

2022年1月11日
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ニコール・キッドマンがそっくりメイクでアメリカ・コメディ界のレジェンド、ルシール・ボールを演じる!?製作ニュースが流れた当初、これはキッドマンがボールの芸を克明に再現する人物伝かと思ったが、出来上がった作品は想像とは違っていた。そもそも、2人は声が違う。(ボールは物凄いダミ声だった)映画の本筋は、大ヒットドラマ『アイ・ラブ・ルーシー』の舞台裏でボールが番組内でも夫婦を演じる夫、デジ・アーナズの浮気を疑いつつも、何とか夫婦の枠内に収まるよう悪戦苦闘する様子を描いたものであった。2人の番組内での役名はリカルド夫妻。従って原題は『Being the Recardos』(リカルド夫妻として)となるわけだ。

同時に、これはTV女優として絶大な人気を誇ったボールが、映画界ではいかに冷遇され、B級扱いされていたかがわかるハリウッド映画史の1ページでもある。また、劇中には彼女が"赤狩り"の標的にされた事実も登場する。本作は、監督と脚本のアーロン・ソーキンが、希代のコメディエンヌの闘う姿を通して一つの時代を再現し、そこに夫婦関係の脆さ、繊細さを加筆した人物伝。ソーキンの語り口は今回も滑らかで、たとえ賞に絡まなくても観る価値はあると思う。

清藤秀人