クローブヒッチ・キラーのレビュー・感想・評価
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クリスチャンのコミュニティ
アメリカ合衆国の典型的な郊外の話なんだろうな。家庭での食事前のお祈り、あれはプロテスタント特有だと思う。知り合いのプロテスタントのお家(ドイツ)でも温かい食事の前は手をつないできまった言葉をみんなで言ってから食事が始まった。近所の人達は互いに知り合い、日曜の昼食後の散歩で彼らと立ち話をして情報交換。
教会中心のコミュニティーは狭い。洗車を子ども達がするのもボーイスカウトもとってもプロテスタント的でアメリカ的な気がした。家庭を大事にする父親。でも狭い地域で活躍するといっても子ども相手。昔の西部劇の時代ではもはやない。だから妻は夫の性癖をわかってたのではないかと思う。
マッチョな風土と女性をターゲットにする連続殺人は関係あると思う。昆虫採集みたいに写真や動画で記録されて保管されてそれを後から味わう。仕留めた獲物を眺めるように。スウェーデンの「ドラゴンタトゥーの女」も同様だった。必ず銃と縄がある。
そういう話に思春期のかわいい男の子が絡むから面倒なことになる。いろいろと関心を持ち始める時期と父親の「趣味」発見が重なってしまった。
タイラーにはあのコミュニティーから出て行って欲しいと私は思った。
父親の素顔
主人公の16歳の少年タイラーは父親が率いるボーイスカウトで精進している。
ある日彼女が父の車からポルの写真を見つけ周囲からヘンタイ扱いを受け孤立する。
タイラーにとってはもちろん自分には身に覚えのないポルノ写真。その真相を突き止める為父親のガレージなどに忍び込み徐々に父親の隠れたそして行き過ぎたSM絡みのポルノ趣味を知ること。
同時に10年前にこの町で起きた十数人の被疑者を絞殺した事件に父親が絡んでるのではないかと疑う。
同じく学校内で変な噂が立ち孤立している少女カッシと父親の真相を追っていくストーリーである。
登場人物が少ない為早い段階で父親が殺人鬼である事は読める。また少女カッシは母親がおらず、母が父親の被害者であることも早い段階で読める。そういう点においては大きな裏切りある展開ではないがこの作品の面白いところはやはり少年タイラー視点から父親を疑い追い詰めていく心理描写がこの作品はとても見応えあり惹きつけられた。
早い段階で疑い父に問い詰めるもやはり父の口車に乗せられまた父の言う事を信じたい気持ちが先行してしまう。
ただ100%疑念が晴れたかというとそうではない。そのモヤモヤする葛藤と父に母を殺されたカッシの存在が彼の正義心を後押しする展開は見やすい。
カッシのサポートもあったとはいえ最後の最後まで父を信じ、殺人犯ではなく父として葬ったところは本来父親が持つべき家庭への責任感を16歳のタイラーなりに果たそうとしたように見えた。
犯人とはわかっていながらも父親とタイラーの身を案じながらハラハラドキドキしながら見れて楽しむことができた。
保守的価値観が生むシリアルキラー
本作の舞台となるケンタッキー州は、キリスト教保守派が多く住む地域を指す「バイブルベルト」に位置する。
いかがわしい写真を持っていただけでとあっという間に噂になり、信仰が足りないとして蔑まされるという。具体的な説明はないけど、本作の小さな町もおそらくバイブルベルトだと思われる。
そんな統率の取れた、言い換えれば抑圧された環境だからこそ、その反動がシリアルキラーを生むというアメリカの暗部を、見事に描いていると言える。もちろん、「信仰=邪」とするのは早計だけど。
人間誰しも知られたくない過去はある。それは友人間、恋人間、そして家族間にもあるもの。その過去が忌まわしきものだったら…中盤で一気に展開が変わり、終盤での決着のつけ方が哀しくて切ない。
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