劇場公開日 2020年10月9日

「脚色の是非」シカゴ7裁判 オスカーノユクエさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0脚色の是非

2020年10月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

アーロン・ソーキンの筆致はいつもハッキリとした意思を持っている。「ソーシャル・ネットワーク」や「スティーブ・ジョブズ」のように、誰もが知る有名人をモチーフにした場合でも、ありのままの事実をなぞるようなことには興味がない。断片的な事実を巧みに組み換え、場合によってはフィクションを織り交ぜて壮大なドラマを紡いでいく。

悪く言えばこれは歴史の改ざんだ。彼の作品にはいつでも“事実とは違う”という批判がつきまとう。今回の「シカゴ7裁判」もまた、実際には起きなかったことを加えたり、事象が起きた時間を前後させたりと大胆な換骨奪胎を行っている。

評価の分かれ目は、その“脚色”の是非だろう。伝えたいテーマに寄り添うがあまり、事実を都合よく捻じ曲げていると批判する意見ももっともだ。ただ個人的には、ソーキンの手法は“ストーリーを語る”という映画の特性をかくも美しく浮かび上がらせていると称賛したい。

シカゴ7裁判という出来事が持つ意味を、できるだけ多くの人に伝えるためにはどうすればいいのか?虚構入り交じる映画という媒体を通して描く最も効果的な解のひとつが、ソーキンの筆致にあるのではないか。

オスカーノユクエ