「ジェンダーとフィジカル」映画 さよなら私のクラマー ファーストタッチ 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ジェンダーとフィジカル

2021年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ジェンダーバランスと平等が社会のあちこちで議論されている。スポーツというのは、おそらくジェンダーというテーマで最も難しい分野の1つだと思う。男性と女声では明確に身体能力が異なるからだ。この作品は中学サッカーを舞台にジェンダーとスポーツにおけるフィジカル差をテーマにしている。
主人公の恩田希は、小さい頃から男子に混じってサッカーをやっていた。小学校時代までは男女のフィジカル差は顕著ではないので、誰よりもテクニックのある恩田は活躍できた。しかし、中学時代は成長期であり、男女の体格差は明白になっていく時期だ。小学校時代は仲間の中で一番高身長だった恩田は、中学になってどんどん身長を抜かれていく。中学の監督は成長期の大事な生徒に一生モノの怪我を負わせたくないから彼女を試合に出そうとしない。女であるというだけで試合に出れない悔しさをバネに恩田は、一層テクニックに磨きをかけ、「フィジカル以外の全て」で男子を越えようと努力する。
男女の体格差はどれだけ世の中が平等になっても埋まらないかもしれない。しかし、主人公はフィジカル差をテクニックで跳ね返す。サッカーはフィジカルだけで決まらないスポーツであることが本作のポイントだろう。

杉本穂高