劇場公開日 2020年11月27日

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「リング上のみならず、人生を生き抜き、闘い続けること」アンダードッグ 後編 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0リング上のみならず、人生を生き抜き、闘い続けること

2020年11月30日
PCから投稿

多くのボクシング映画が「苦難の果てに勝利を掴み取ること」をゴールとして掲げるのに比べ、この前後編を貫く物語はスタンスがやや異なる。ここでは奇跡は起こらないし、いくら血反吐を吐くほどの努力を重ねても、圧倒的な差は埋まらない。だが、負け犬は負け犬でも一矢を報いることはできるし、その闘い方、ボロボロになってもなお立ち上がりファイティングポーズを構える姿で、人の心を動かすことはできる。とりわけ後編は、身と心が崩れ落ちそうになりながらも、ただ無心となって人生を彫り起こしていく様を、より強烈に印象付ける総仕上げ。二人のボクサーのみならず、周囲の人々の姿も陰影深く盛り込み、ボクシングを離れた群像劇ドラマとしての味わいを増していく。最終盤の激戦は、まさに各人の闘いを集約、象徴するもの。人生にノックアウトされまいと歯を食いしばる彼らにとってはもちろん、我々観客の目にも、熱い生気をもたらす着火点となるだろう。

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牛津厚信