護られなかった者たちへのレビュー・感想・評価
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正義の反対は正義である
ただの殺人サスペンスでも、単純に社会問題を伝える映画でもない。現代の居た堪れない社会をリアルに描いている。
誰も悪いわけではなく、みんな誰かのためになりたいと思っていても、歯車が噛み合わず理想通りにいかない世の中。とても難しい問題だ。
それでも、行き場のない想いも押し殺さず声を上げることが大事だというメッセージが込められている。
みんなつらい過去を背負っていたり、苦しい現実を抱えている。それでも寄り添って生きていくしかない。
死んでいい人なんて誰もいない。
でもきっとどこかで誰かが見ていてくれる。世の中捨てたもんじゃない。
みんながそう信じて助け合えばきっとうまくいく。変わっていける。
そんな理想論でも夢物語でもない、現実的な希望を描く。
それぞれが誰を護り、誰を護れなかったか。殺人の真実を知ったとき胸が締め付けられる。
登場人物の誰に感情移入するだろうか。誰が正義で、誰が悪か。それは表裏一体。
その答えのない問いかけに考えさせられる作品。
阿部寛の堪える表情に熱くなった。
護ることが出来なかった者たちの鎮魂歌
東日本大震災で、生き残った人たちの悔恨と魂の救済をテーマにした重厚な社会派ドラマです。瀬々敬久監督は、こう言うドラマでは抜群の腕前で、生活保護制度の矛盾を声高に叫ぶのではなく、震災時と震災後の登場人物の苦悩を丁寧に描いています。この抑制の効いたタッチとエンタメ性のバランスが絶妙で、ドラマとしてとても見応えがあります。役者は主演、助演共に好演ですが、阿部寛の虚無感漂う瞳、佐藤健の抜き身の刃のような瞳、倍賞美津子のどこか暗い瞳など、眼の演技が印象的でした。
ラストがいい
ストーリーも展開も素晴らしい作品だと思います。
場面展開も全く違和感もなく、現在と過去のストーリーも整理されてて分かり易いのもいいと思います。
1番いいのは、ストーリーの繋がりです。
ここでこう繋がるのかってのが凄くいいです。
今年のBest3に入る映画です。
是非見て頂きたいです!
護るべきものとは
生保の現場の人から話を聞く機会が昔あったので少し思い出しました。
最前線のほぼ全ての人が一生懸命働いているのに、それを管理する人、または国が財源をつけなかったり、運用しづらい決まりを作ってしまうと簡単に悲劇が生まれます。
ましてや震災直後の混乱があるとするなら。
生活保護制度自体は決して悪い制度とは思わないです。
テーマは良し
原作未読。
ミステリかと思わせておいて、生活保護制度への問題提起、ひいては現行政権への不信感をテーマとした作品だった。震災を絡めてくるあたりはちょっとズルいかなとも思うが、まさに今の問題をテーマとするその意気は良しと感じた。今作は良い方の瀬々だったかな。
あと、ベテランの役者に混じって、清原果耶の演技が見事だった。表情、とくにその目力。言葉で語らずとも伝わる感情に圧倒されてしまった。
東日本大震災の被災者にこの映画を捧ぐ。
震災後に起きた、主人公とヒロインと祖母の疑似家族がじわりと来ました。
数年後に久しぶりの再会の時に生きててほしいと生活保護を受けたのになぜ辞退したのか?
そして主人公は何故男3人を殺そうとしたのかその真相が解ったときに泣きそうでした。
色々と不自然な点が
まず良かった点は大どんでん返し。
犯人が違うのは何となく伏線があったが、
まさかあの子だとは予想外だった。
悪い点としては
・汚名挽回(誤用表現)という言葉があった
・ミスリードを誘うため伏線として佐藤健に「そっちこほ辞めた方がいいよ」と幹ちゃんが言うが、犯人が幹ちゃんだと話の辻褄が合わない
・幹ちゃんが吉岡秀隆を殺すまでのシーンが長い、
中々殺さない。阿部寛も捕まえずずっと待ってる
・そもそも女一人であのガタイのいい男たちの殺人は無理やろ
などなど。
色々矛盾点はありましたが
楽しめました。
生活保護の現実
市役所職員として厳しい現実をテーマにしていただき、感謝します。
一般の方がどう感じたのか気になります。
一人のケースワーカーが100人以上の受給者を抱え、社会復帰への支援と毎日増える新規受給希望者との対応に追われてます。
心が折れてる職員も多いし、人間不信になりそうなことも多いです。護るのは、ホントに難しい。
事前にあらすじを把握してないと理解し辛い
全体的には良い映画だと思う。
出演俳優の演技力の高さと華やかなルックスによって悲痛な出来事ながら映画自体に華があり、非常に惹きつけられた。
ですが、泰久兄ちゃん、カンちゃん、ケイさんの3人の関係が映画だけ観てても分からない事と、字幕で時期を表示する様な説明もないまま、シーンの移り変わりが激しく、時系列もわかり辛いのが難点だと感じたが、俳優陣の演技力の高さには目を見張るものがあり、心に響く作品の一つになった。
少し残念なのは、若い女性ひとりで成人男性の体の自由を奪って餓死させると言うのが、現実的ではないのと、そこに至るまでの犯行の一部始終は描かれておらず、空き家に連れ込むまでの一連の流れが部分的にでも描かれていればなおリアリティがあって良かったと思う。
泰久さんが配給のパンを巡ってカンちゃんの為に憤り、一般市民に取り押さえられ、水溜まりの中に顔を押し付けられるシーンは本来なら目を覆いたくなる様な痛々しい有り様だけど、震災で一瞬にして日常を奪われた人の心の荒みがよく描かれていると感じた。
不正受給がまかり通る人がいる中、本当に必要としてる人には辞退申請に持ち込もうとする役所の人間による入れ知恵があり、どこの社会でも弱者は侮られる現実に、生物の本能とでも言うべきか、弱肉強食の法則に無意識に従う言動をとってる本人が気付いてない所に人間の真の恐ろしさとは無意識に行われる事の中にあると感じた。
あらすじを把握した広い視界の観点で観ると、回数を重ねるほど心に沁みる映画だと思う。
声をあげて生きて欲しい
関東に住み仕事がある自分の生活は311でほぼ変わらなかったけれども、かんちゃんや泰久の様に311により人生が大きく変わった人達が日本には沢山いるんですよね。いや待て、自分の生活が変わらなかったと思っている私は、相当鈍感な人間なのではないか?沢山の人達の人生が変わったのだから、私の生活が変わらないわけがない。日本が変わらないわけがない。
けいさんは、健康で文化的な最低限の生活を保障している日本国憲法の下で暮らしているにもかかわらず、制度により困窮を余儀なくされた国民の象徴として描かれていました。生活保護制度を「使わない」「使えない」のは、同調圧力に弱い控えめな国民性ということもありますが、餓死者を出す一番の原因は、国民性よりも国をあげての生活保護受給者ネガティブキャンペーンにあると思います。厚労省から自治体にかけられる圧力からも、国家権力の悪意を感じとりました。税金とは?
だからこそ監督は、権力の圧力が強い中でも、どんなに辛い事があったとしても、皆が声をあげてあきらめないで生きて欲しいというメッセージを作品に込めたのだと思います。
そして、かんちゃんは、今最も貧困化が進んでいる若い女性の怒りを表しているようでした。よほどのことがない限り、女性はあんな殺し方はしません。フィクションとはいえ、学費や生活費の為にパパ活をしたり風俗で働く若い女性やご飯も食べられないシングルマザーと、まともな雇用を破壊し貧困を招いた権力のことを考えずにはいられませんでした。
フェリーニもケン・ローチもポン・ジュノも山田洋次も、不器用でずる賢くてだらしない貧乏人の視点から社会を描いてきました。村上春樹は壁を権力に卵を庶民に例えて、壁がどんなに正しかろうとも卵がどんなに間違っていようとも、自分は常に卵の側に立つというスピーチをしました。本作に出てきた人物は皆真面目に生きていましたが、本来真面目じゃなくてもいい加減でも、誰でも生きられる保障が権利なんですよね。映画の醍醐味は、真面目でも不真面目でも庶民に対する愛情を描いているところだと思います。
「佐藤健、生きざま」
今年77本目。
新聞の記事で佐藤健が「泥水に顔くらい普通じゃないですか」と語っていました。生き様見習いたい。
2017年の「8年越しの花嫁 奇跡の実話」が佐藤健の作品で一番好きで、瀬々敬久監督でしたね。それ以来のコンビ。
瀬々監督は一番好きな監督で「8年越しの花嫁」「楽園」「糸」と秀作揃い。
この10年の佐藤健の充実と監督が合わさった今作品は、重厚なテーマも相まって2時間14分一度も目が離せない展開となっています。
佐藤健がうどんを食べるシーンが好き過ぎる。
誰も悪くない
殺人は悪いことです
だけど、最後に誰も悪くないとおもってしまいました。
観終わって、エンドロールと桑田さんの歌が流れて
知らぬ間に涙が流れました
いろんな人が、いろんな立場で辛い思いをして、
私も母であり、生活保護に関係ある仕事をしていて
共感する部分が多すぎて
誰も悪くないっておもってしまいました。
孤独と寄り添う
3.11の後、残された人たちがどう歩むか。全力で前を向ける人もいる。
孤独と戦い、苦しみ、うまく護られず生きる人もいる。
この映画は護られなかった人たちをテーマに悲しい道になったパターンである。
3.11はもとより、生活保護の現場を知ることも出来た。
私も孤独を感じることがある。孤独だからこそ、声を上げて助けを求める必要がある。
孤独だからこそ、周りから逃げちゃダメなんだ。
だから、寄り添うってすごく大切なんだ。
護られなかった先にあるそれぞれの道。
一番最後にすべてが繋がる。
繋がった時の刑事から出た言葉は、それぞれの人生を救うものだった。
私も救われた気がしました
時系列が分かりにくいですが
震災よりも生活保護について、ということは漏れ聞いていたので、そこをどう表現するのだろうか、と思って見ていました。
佐藤健さん演じる青年の心情表現が、キャラクター的に口数が少なくて、彼への感情移入が少ししづらく、また避難所で少女(カンちゃん)から配給のパンが奪われてしまった時、彼女のためにパンを!と言えばいいのにただがむしゃらに列を無視して取りに行くことで周りから迷惑者扱いされてしまう演出が釈然としませんでした。ちゃんと並んでいた女の子にもパンを!と正当な主張をすればいいのに、何故彼がこういう性格なのか、説明が無く、
またなんとなく避難所でおばあさんとカンちゃんと主役の彼と、3人がいくら他に身寄りが無かったとはいえ、3人があっという間に「いつも一緒にいる人達」っぽくなっていて、展開の早さに付いていけませんでした。
そんなに急に、他人どうしですぐ、おかえりとかただいまって言えるものなのかな?と違和感。。
後から「救えなかった男の子と似た黄色い上着を着ていた女の子だから助けたかった」と、最後の最後で理由が語られますが、説明遅い。。という感じで。3人が一緒にうどんを食べるシーンも、多分感動的なのかもしれませんが、あまり伝わらず、演出や説明不足が残念でした。
あと時系列がとっ散らかっていて、映画として分かりにくかったです。
せっかく、生活保護の①不正受給阻止も、本当に困っていて財産なども無いなら②正当な支給も、うまく機能しなければならずとても難しい問題に斬り込んだ、考えさせられる題材を取り上げているのに、演出、見せ方、時系列の分かりにくさがもったいない、と思いました。
あと、一応彼女の犯罪の様子を再現してはいましたが、どう考えても大人の男の人を22〜3歳?くらいの女性1人がスタンガンのみでアパート2階に引きずって運ぶとか、生きたまま放置して餓死させるんだからまだ犯罪時点で男の人は生きてるわけで、拘束するまでの手順?簡単に同じ車に乗ってくれるものなのか?車中でスタンガン当てても、多少手を振り払われたら形成逆転しないのか?
と、別に格闘技も何も心得無さそうな女性1人で男の人を拘束出来たことがめちゃめちゃ疑問で。。毒殺とかじゃなく、物理的に生きたまま拘束するのが真実味が無くてちょっとあ然としました。
また佐藤健君が多分ガムテープかロープ?ナイフ?を買ってるシーンがあったけど、結局建物の入口に放火と、最後の議員には謝罪を要求するための脅し用ナイフを買っただけ?
おばあさんの生活保護をきちんと受給させてあげなかった職員達を恨むわりには「死んでいい人間なんていないんだ」と、職員達も擁護することになるセリフに違和感。このセリフは、生活に困窮している人達が誰ひとり見捨てられてはならない、の意味だと思うのですが、職員を餓死させたカンちゃんを諭しているなら職員を餓死という同じ目に合わせちゃ駄目だ、にも聞こえて。。それ自体は人としては正論ですが、あんなに職員達を恨んで無かった??と脚本が分かりにくかったです。
放火について新しい職場の面接で話す時、「あまりにも対応が酷くて火を付けました」と言っていたので、確かに建物の入口付近のコンクリートを燃やしただけっぽいけど、万一風が強い日で窓が開いていたりしたら、火の粉が建物内部に入り、万一残業している人がいたら被害を受けないとも限らない。それをした人が言うセリフとして説得力があまり無くて脚本が残念でした。
でも佐藤健君と阿部寛さんの眼光の鋭い演技は良かったです。
またこの物語とは関係無いですが、警察の上の方の役職にまた鶴見辰吾さんがいて、あー署長と緋村剣心がいる〜!と個人的に嬉しかったです。
一番最初の外の被災した様子、建物やその他の散乱した物の再現は凄かったので、脚本だけ惜しいな、と思いました。
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