劇場公開日 2021年1月8日

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「日本にも運動で社会が変わった実例があった」大コメ騒動 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0日本にも運動で社会が変わった実例があった

2021年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

日本は社会運動で世の中を変えることはできないと思っている人が多いように思う。実際、昭和・平成の歴史を振り返ると、運動は無力だったかもしれない。しかし、この国の歴史にも実際に社会運動で大きく世の中が変わった実例があったのだ。それがこの映画が描く米騒動だ。
シベリア出兵によって米が戦地に送られた結果、国内の米価格が高騰。家族に食わせる米がなくなった女性たちが米の価格を下げろと迫る。
女は侮られていた。運動に参加した者の中で唯一の男性だけは逮捕されたが、女性たちは逮捕する価値もないと判断された。しかし、その運動はやがて全国に飛び火し、遂には時の内閣が倒れるまでにいたった。
運動もずっと一枚岩でなく、だれか裏切っているのかもと疑心暗鬼の心から村八分にされる者が出るなど、田舎的コミュニケーションの暗部も描かれるし、メディアがフェイクニュースばりに大げさに煽ったことで運動が広がったという、功罪相半ばするようなポイントも描かれる。
生活のために戦った人々の偉業を描いたこの作品は、コロナ禍の今だからこそ、現代人に響くはずだ。

杉本穂高