劇場公開日 2021年10月1日

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「へばな」光を追いかけて 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0へばな

2021年10月22日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

難しい

秋田の田んぼが広がる田舎町。
過疎化が進み、町の中学校は閉校が決まっている。
父親の地元に引っ越してきて以来、あまり周りに馴染めない彰は、得意の絵を生かし閉校祭を通じてクラスに溶け込んでいく。
ある日、空に謎の緑の光を見た彰は、田んぼの中のミステリーサークルに吸い寄せられるようにたどり着き、不登校の少女・真希と出会う。

リリィ・シュシュっぽいと評判が良かったため鑑賞。
とても不思議な作品。
確かに構図はリリィ・シュシュと符合する部分もあるが、過疎化する地方においての青春映画だった。
田舎の閉鎖的コミュニティで四方八方に飛び交う棘。
団結しているようで皆が個々で独立した孤独な暗い世界。
そんな昼間の暗闇に現れた謎の光が彼らを導いていく。
幸せになった瞬間訪れる表裏一体な苦しみ。
結局光が何だったのかは分からないけれど、あの光は希望だったのだと思いたい。
地元に残る者、離れる者、やって来る者。
町は変わるけれど、昔から変わらないところもある。
田舎ゆえの良さと悪さ。
町にやってきたエイリアンは、町からはみ出たエイリアンと出会い、周りを変え自分も変わった。
未成長のエイリアンたちは、きっとこの後少しずつ自分の星を見つけていくのだろう。

若手キャストが瑞々しくも神秘的で美しい。
中学生たちの未熟な演技と一部の中学生らしからぬ大人びた感じが介在していて良い。
無からの有が素晴らしい中川翼、神がかった存在だが笑うととても可愛い長澤樹、鋭い眼力と圧倒的存在感にこちらが吸い込まれそうな中島セナ。
駿河太郎、小野塚勇人、生駒里奈など脇を固める役者も良い。
個人的ベストアクトは柳葉敏郎。ご本人も秋田出身だし、実際にこういう人絶対いる。

監督はCM監督の方らしく、ドローンでの撮影などとても凝っている。
何気ない風景が宝物に見える映像美も流石。
ドローンの無人爆撃とかしてる人に見せてやりたいわ。
地域活性化を狙った映画だけあって、ババベラアイスやきりたんぽなど、やや押し付けがましいところもあり。
ただ地方映画あるあるで、めちゃくちゃその土地に行きたくなる。
上映館少ないけれど是非観て欲しい。
果たして貴方は中島セナが中川翼を中島くんと呼ぶ矛盾に耐えることができるのか。

唐揚げ