劇場公開日 2020年9月25日

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「夜の静寂の中に、鮮烈かつ魅惑的な野性味がほとばしるノワール作品」鵞鳥湖の夜 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0夜の静寂の中に、鮮烈かつ魅惑的な野性味がほとばしるノワール作品

2020年9月22日
PCから投稿

夜の静寂の中、鮮烈な野性味がほとばしるノワール作品だ。舞台は都市開発から取り残された鵞鳥湖のほとり。片や警察に追われる男がいて、片や「あなたの奥さんの代理で来た」と主張する女がいる。建物の陰で初対面を交わした二人は、これまでの経緯を回想しつつ、この先どうすべきかの決断を迫られる・・・。ストーリーだけみると単純な逃走劇かもしれない。だが、主人公をあえて一人に限定せず、男女それぞれが目線を絡ませあうことで語り口の面白さが増す。

寡黙で胸の内側をほとんど表に出さない彼らには、何を考えているのか分からぬミステリアスな雰囲気が漂い、だからこそ身体を駆使して感情が一気に噴き出す際の凄みは計り知れない。寂れた街並みを照らすネオンや蛍光色も忘れがたい要素。イーナン監督流の魅惑の映像美にすっかり陶酔しきりの我々観客の姿は、怪しい明かりを求めて水辺に群がる登場人物たちの生態とさほど変わらないのかもしれない。

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牛津厚信