劇場公開日 2019年6月8日

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「観る価値なし」クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0観る価値なし

2019年7月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

アート映画としても、ウィーンの歴史物語としても見所なし。少なくともクリムトとシーレについては、ありふれた情報しか得られない。
シーレ風の案内役や、ノーベル賞学者のエリック・カンデルをはじめ多数のコメンテーター出てくるのだが、各々が勝手な解釈を言っているだけで収拾がつかない。

同時代の文化人を持ち出して、むやみに話を膨らませていくことは容易だろう(確かに有名人は多い)。しかし、アート映画の質として問われるべきなのは、それらの話が本当にクリムトやシーレと、密接に関係しているかどうかである。“なんとなくウィーン”的なムードに流されては困る。
例えば、クリムトやシーレのアートにおいて、「性愛」や「死」は本質だ。しかし、「世紀末ウィーン」の知的雰囲気を共有したからといって、他の文化人における性愛や死を、唯一無二の存在であるクリムトやシーレと直接結びつけるのは強引だと思う。
折衷主義者のクリムトは、フランス近代、象徴主義、そしてジャポニスムなど、ウィーン以外からもインスパイアされている。

ビジュアル・アートを哲学・文学など、他のジャンルから解釈するのは、学者の博覧強記な“おしゃべり”に過ぎないことが多い。
この映画を観た後、気になってエリック・カンデルの「芸術・無意識・脳」(九夏社)を読んでみたが、やっぱりというか、クリムトやシーレに言及した部分にはがっかりさせられた。

また、クリムトの金ピカの作品を掲げて、「ウィーン黄金時代」と名付けるのも、ミスリードだろう。確かにアート面ではウィーン分離派の時代であるが、ウイーン自体は没落の最終局面のはず。
さらに、吹き替えだったので、テレビ番組を観ているようだった。観る価値なしと思う。

Imperator