劇場公開日 2019年3月1日

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「Can you save me」Noise ノイズ KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5Can you save me

2019年3月2日
iPhoneアプリから投稿

全員似て非なる者で、全然違うけどどこか似ている者同士。
秋葉原連続殺傷事件を元に、生きづらくてたまらない人々に焦点を当てて切り貼りした作品。

被害者遺族の耐え難い理不尽さと悲しみと死んだ目、加害者の追い詰められ方と行き場の無い怒りと発散方法、家族への嫌悪感と他者への縋りと行き着く先。

メインの三人とその周りの人々の苦しさがずっと映し出され、だいぶしんどいシーンも多い。
絡み合うことのない相反する人たちが間接的にすれ違い、お互いよりかかっているように感じた。
自分にとってはモブキャラの街中で一瞬隣り合う人々に、背景と抱えるものがあることを示してくれる描き方はどんな作品でも好き。
他者から見た自分がモブであることと共に意識していきたい。

美沙の父親、里恵の父親、健の母親の対比が良い。
他の登場人物も全部合わせて、それぞれがそれぞれに無意識のうちに救いを求めていて、そこでまた少しつながる関係にグッときた。
ひどい人も多くて、それでも一緒にご飯を食べる所がとても好きだった。レトルトカレーは定番だよね。
美沙が倒れ込んだ先にあるものとそばに立つ人を見たときはしびれた。

脇役に魅力のある人が多い。
特に健の職場のドルオタおじさんとリーダーおじさん。マネージャーの高橋と里恵の父も良かった。アイドルメンバーも。全員良いな…。
リーダーおじさんの話にひたすら頭の動きで答える健が可愛い。
話し下手な彼が一度まくしたてる時の苦しさ。

生き辛い人、生きてる人、亡くなった人、殺そうとする人、その周り一人一人に寄り添う姿勢と救いを感じた。
許しもせず突き放しもしない距離感。
自分を殺すか他者を殺すかの紙一重の差をヒリヒリと実感する。
そんな分岐路に立ちたくはないけど、いつの間にか目の前に現れてることだってある。

秋葉原という街はかなり身近で、日常の風景がスクリーンにずっと映し出される不思議な感覚になり、この映画をより近くに感じる。
私自身の弱さも相まって、登場人物それぞれに少しずつ自分を重ねて観ていた。まあ比べものにならないけど。
弱者だと思っていたけど下には下がいるもんだな、なんてひどく傲慢なことが頭をよぎってしまう自分が嫌になる。
なんでかわからないけどわりとずっと涙が流れててどうしようもなかった。生きたいな。

Can you save me?のフレーズが重い。
Music by banvoxとのことで、Save Meと無難にWatch Me辺りが流れるかなと思っていたらまさかのLaserが使われていてびっくりした。
懐かしい。Cookieとか大好きで音源手に入れてからずっと聴いていたな、とか高校生の頃の生活や家庭を思い出し重ねてまた泣いてた。
音数の多いbanvoxの曲は秋葉原によく似合うなと前から思っていたので嬉しい。

時系列をいじった演出が面白い。もう一度観て整理したい。

KinA