劇場公開日 2018年8月4日

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「サスペンスというよりホラー」2重螺旋の恋人 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5サスペンスというよりホラー

2018年8月26日
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鑑賞方法:映画館

怖い

 いやはや、なんとも凄い映画を観せられたという気分である。観賞前の印象は、公式ページや紹介文から、双子の精神科医とそれぞれに関係を持った女性が主人公の心理サスペンスという感じだったが、実際に鑑賞してみると、サスペンスというよりもホラーな内容で、結構怖い。
 物語は途中まではリアルな感じだが、ふたりの精神科医が双子だと、主人公が知ったあたりから現実と夢と幻想または回想の境目が曖昧になっていく。そして誰が真実を言っていて誰が嘘を吐いているのか、わからなくなってしまう。それはある意味、人生の真実かもしれない。
 疑問はたくさん残る。女にとって愛とセックスは別のものなのか。精神科医は女の欲望さえも操れるのか。結末の意味は一体どういうことなのか。
 私には真相がよくわからないままに映画が終わった感じだが、突き詰めて考える気にはならない。人間というものは、欲望を満たすにも相手が必要だ。承認欲求も、場合によっては愛も、相手が必要である。結局他者の存在なしには欲求を満たせないのだ。禅のような、ひとりで究極まで考察して真理に至ろうとする生き方もあるにはあるが、主人公はまだ若くて、他者の存在を超越する方向には解決を求めない。或いは他者を意識することなしには生きられない。悲劇は他者である双子の精神科医に由来するのではなく、そもそも主人公自身が内包していたと考えれば、この作品の世界観が見えてくる。

耶馬英彦