劇場公開日 2018年5月26日

  • 予告編を見る

「死は凡庸で究極の平等」ルイ14世の死 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0死は凡庸で究極の平等

2018年6月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

タイトル通り、ルイ14世の死を描いた作品であり、良くも悪しくもそれ以上でもそれ以下でもない。太陽王の死が以下に社会に波紋を広げたかなどとは描かれないし、彼の功罪を問うような姿勢もない。

あるのは、一人の老人の凡庸な死だ。ルイ14世ですら死ぬ。当たり前のことだが、その当たり前に我々は意味を与えすぎている。そこに誇張や神話が入り込み、事実が歪んでいく。

映画は死を誇張することなく、ロングテイクでじっと寝たきり老人であるルイ14世が衰えていくさまを捉える。劇的な要素は極力排除される、死にドラマを与えたくなるのが映画作家の自然な反応だと思うのだが、死はただの死でそれ以上でもそれ以下でもないのだと言わんばかりに、監督は淡々と見せる。

退屈なくせに、ある考えに行き着くと妙なカタルシスを覚える。あのルイ14世も死ぬのだ、我々と同じように。どれだけ偉大な人間にも死は平等に訪れるだと。それはなんだか僕には安心できる事実だった。死は究極の平等だ。この世界にもまだ平等があったのだ。

杉本穂高