劇場公開日 2018年7月20日

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「やろうとしたことは評価できるがおもしろくない不思議な作品」未来のミライ いっしーさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5やろうとしたことは評価できるがおもしろくない不思議な作品

2021年9月7日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

一家の長男であるくんちゃんが、妹の未来ちゃんが生まれたことによって赤ちゃん返りし、駄々を捏ねながら庭の木の不思議な力で一家の先祖たちと交流し、くんちゃんではなく先祖たちがそれぞれのコンプレックスを解消して前に進んでいく物語。テーマは非常に良いと思うし、スタジオ地図の作画力はやはりさすがでとても美しかった。でも作品としてはおもしろくないというとても不思議な映画だった。

テーマについて考察してみる。
例えばくんちゃんの母親は、「弟とは仲良くしていた」とくんちゃんには言うがタイムスリップした先で母親と弟さんが遊んでいる様子は一切なかった。母親からすると弟ともっと一緒に遊びたかった、お姉さんらしくしたかった。そんな時くんちゃんが現れ、その願いを叶えてくれた。これによって母親は人間として成長し、前に進むことができた。
この作品のテーマは「今を生きることの大切さ」ではないだろうか。あの一家の先祖たちは全て「未来」の存在であるくんちゃんによってそのコンプレックスや悩みを解消してもらい、前に向かって、そう「未来」に向かって進んでいく。そのことによって今のくんちゃんが存在する。つまり過去の人たちにとって「現在」とは「未来」であり、生きる「希望」である。「希望」があるからこそ今日の「現在」の幸せがあるのである。ではその「希望」であるくんちゃんは何に縋れば良いのか。それが「未来のミライ」ちゃんである。このように過去と現在、現在と未来は繋がっており、過去があるから今がある。今があるから未来がある。過去も未来もお互いが支え合って生きている。「未来」での幸せを手にするには「現在」を大切に生きるべきである。細田監督は本作でこんなことを言いたかったんじゃないだろうか。
このように要素を取り出せば非常に良いテーマだと思うし、まだ無邪気な子供がその無邪気さ故に周りの人たちを元気にしていく、そんな描写は万人に取って幸せが伝わってくる良い画となるはずだった。でも実際にこの作品を鑑賞すると、なぜかおもしろくない。テーマや要素はいいはずなのに、おもしろくない。なかなかに不思議な映画だと思った。

いっしー