「結局は金欠病が・・・」ローマンという名の男 信念の行方 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0結局は金欠病が・・・

2019年7月27日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

 ESC.とは元は騎士志願者を指していたが、弁護士の多くは敬称として用いるそうだ。このエスクが終盤にはエスケープの意味に変わることなど予想すらできなかった。一見して、ボサボサ頭で風采が上がらず、いつもヘッドホンで音楽を聴いているという、とても弁護士とは思えない男が主人公だ。

 ローマン・J・イズラエルはかつての黒人公民権運動の影響を受け、弁護料が安くても主に刑事事件の人権派弁護士として闘ってきた。とはいえ、法律事務所を細々と経営するウィリアムの完全なる裏方であり、法廷に立つこともなく人と喋るのも苦手な弁護士。しかし、記憶力だけは抜群によく、ウィリアムが倒れてからは、大手の事務所オーナー、ジョージ(コリン・ファレル)にスカウトされる。しかも週給500ドルという、弁護士としては低賃金で・・・

 早速受け持った案件はデレルという黒人男性がアルメニア人店員を銃殺したという事件。主犯のギャングの一員カーター・ジョンソンは捕まっておらず、彼がそのまま共犯として終身刑は免れない状況だった。しかし、デレルはカーターの居場所をローマンだけに伝え、減刑してもらうよう懇願する。証人保護プログラム付きで。

 ボランティアで抗議運動を教えているマヤと出会ったローマン。自分の信念である弱者救済と意見が合致し、気を許すようになる。ローマンには7年間温めている、司法取引に関する集団訴訟を計画していたのだった。もちろん新しい職場では拝金主義が基本であるため、金にならない訴訟は扱っていないという設定だ。

 長年、金にならない人権派弁護士を務めていただけにいつも金欠病のローマン。ある時、アルメニア人殺害の懸賞金が10万ドルだということを知り、弁護士の守秘義務を放棄してこっそり親族に主犯のカーターの居場所を教えるのだ。魔が差してしまったローマン。それでも大金を得て週末に豪遊。このまま普通に暮らしていけると思ったら、秘密を教えてくれたデレルが刺殺されるという事件が起きた。そして新たに指名を受けて拘置所に向かうと、その被疑者がカーター本人だっというわけだ・・・愕然。

 もうここからは真面目に生きてきたローマンの人生が破滅に向かうだけ。もう逃げることしか頭になく、すれ違う車がすべて自分を殺しにきたギャングだと被害妄想に陥ってしまう。自虐的、堕落的、ネガティブな感情を一気に背負い、ついには自分で自分を告発する方向に考えがまとまり、原告=被告=弁護人という驚くべき行動に出るのだった・・・

 ガーン!とショックを受ける雰囲気を音をこもらす手法で表現し、これがiPodを手放せない彼の性質に見事にフィットする。「車を盗んでも罪に問われない場合がある。それは危機を回避するとき」などと雄弁さも、単に金欲しさに罪を犯してしまっては言い訳が立たない。そんな男の結末も〇〇〇だったが、コリン・ファレルの取った行動がカッコよくて痺れた!

kossy