配信開始日 2017年3月31日

「博士の科学は極楽浄土を示す救済で、STEINS;GATE」ザ・ディスカバリー とびこがれさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0博士の科学は極楽浄土を示す救済で、STEINS;GATE

2023年5月12日
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鑑賞方法:VOD

 死後に別の世界があり、この自意識と記憶が持続するとしたら。よく故人と故人の絆を偲び、「あの世で再会してまた酒を酌み交わしているでしょう」なんて言われますが、そのイメージですね。死後の世界があると証明された時、世界中の人々が次々と自殺を選んでいく。
 まず星新一によく似た話があります。それは(星新一いつもの)アルファベット一文字博士がセミナー会場で新たな発明品を披露するシーンで始まりました。電話機のような発明品を見せて、これは死者と会話することができるものです、と言って博士は突然自殺します。どよめく会場のなか、その電話機が鳴り響き、博士の助手だった男がおそるおそる出ると「やあ、話には聞いていたが、死後の世界はこんなところなのか。意外といいところじゃないか…」と博士の声が聞こえてくるわけで。
 死後の世界に電話をかけ、喪った親しき人と話をすれば「私もそっちに行く」と行って自殺する人が列をなしていくわけですね。
 しかし違うのは、星作品の方は死後の世界が存在して、自意識も記憶も継続して、それを信頼できる人との話によって確信させられる、というところですよね。本作では「行き先がわからなくても、電車が発進したことを証明することはできる」とか行って、証明曖昧すぎます。死後の世界あったとして、現世と同じかより良いものか、わかるわけがない。
 ですので、クソだと確定している現世に留まるより、未規定な(もしかしたらさらにクソかも知れないが、よりよい可能性もある)死後の世界とやらに希望を見出だすという人たちが続出したということです。
 博士の発表なんて、おそらく誰も、自殺した人たちでさえほとんど真に受けてはいなかった。けれど、藁にもすがる思いで、死後の世界があってもしかしたら現世よりいい場所かも知れないと希望をもった人たち。つまり今のこの世界を、これ以下のない最も苦しい場所だと確信した人たちが100万人以上もいたという映画内の出来事は、現実においてもリアルかも知れません。
 発達した科学と魔法はなんとやら。極楽浄土で幸せになる宗教を信じて幸せになる人を羨ましがって、神様より科学(詳しくない一般人からしたらどっちも同じだが)を信じた人たちの心に救済を与えた博士の発表。「これはカルトだ」なんてシーンもありますが、博士に責任なんてないですよ。自殺した人たちにとって、今すぐ脱出せざるを得ない社会を構成してる、私を含めた全ての人の責任ですね。
 めっちゃ面白い入りで引き込まれましたが、主人公がオカリンやってる理屈はわかりませんでした。結局STEINS;GATE世界線には行けなかったぽいですけど。

とびこがれ