劇場公開日 2017年1月7日

  • 予告編を見る

「川を自由に泳ぐ魚にはなれない」The NET 網に囚われた男 フリントさんの映画レビュー(感想・評価)

川を自由に泳ぐ魚にはなれない

2017年2月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

怖い

北の漁師が事故で南に行き帰ってくる話

北朝鮮と韓国の歪な関係を鋭く描いた作品だと思った。
テンポも良くタイトルが出る前に事故で国境を超えてしまう。

取り調べの嫌な感じと、一向に帰れないもどかしさ、単純に解決できない
もどかしさなど、全体的に心にズシンと来る。

主人公は後ろめたさなく、純粋に帰ることだけを望む。しかし両国間の摩擦によって
翻弄され絶望する。
単純な話であったがそれ故に奥の深いテーマで軍事境界線のもどかしさが伝わって来た。

独裁国家だとしても生まれ育った場所ならばそこにはそこの幸せがある。
韓国側がいかに自由で素晴らしく思えたとしても、故郷に家族が居るならば、
帰る場所は一つだ。

TVなどでいかに北朝鮮は危険であるかを切々と語られているが、内面までは深く語られない。
国民の生活や意識はどうなのか興味が湧いた。
実際、ロケットや核ミサイルの脅威は有るが、そこまで自分勝手な国だろうか。
アメリカや中国、ロシアだって同じ実験はしているし武力でわがままを押し通しているように思える。
国家の問題は色々あるし完璧な国なんて有りはしないのだから、互いの良い所、悪い所をしっかり理解して
いきたいと思う。

脱北した人の何割が帰りたくとも帰れず、無理やり韓国国民になっているのか。
この映画を見るまで、脱北者は北朝鮮が嫌で命からがら国境越えして来たものと思っていたが
そうとも言い切れないのだなと思った。

最後の展開は悲劇としか言いようがないのだが、国境とは国家とは何なのかを考えらせられた。

素晴らしい作品だった。

劇中セリフより

「自由が幸せとはかぎりません」

今が幸せなのは自由だからなのか?

自由のために戦う意味があるのか、幸せのために戦うのか。
不幸を生む争いだけは避けなければならないと思った。

フリント