劇場公開日 2016年7月9日

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「信じてくれる人がいれば奇跡は起こる」死霊館 エンフィールド事件 ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5信じてくれる人がいれば奇跡は起こる

2016年7月28日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

知的

ホラー映画だと思って、本作を敬遠している人にほど観てもらいたい。ホラー要素は確かにあるものの、物語の根底には人を信じることの強さにある。

突然椅子が動きだす、少女に老人の霊が乗り移る…。心霊現象と悪魔祓いにウォーレン夫婦が挑むという物語の基本コンセプトは前作と同じだが、今作では心霊史上最も長期に渡って調査され、最も信憑性の高いと言われるエンフィールド事件を取り扱っている。リアルでグロテスクなモンスターがスクリーンに現れる昨今でありながら、実に巧みな恐怖演出と、やたらに余白のあるカメラワークにここまでゾクゾクさせられるとは、正に温故知新のホラー演出。このような作品を見ると、やはり人間の恐怖心を煽る演出の普遍性を実感せざるを得ない。

クラシカルなホラー映画の風潮を現代に蘇らせた前作に比べると、何を信じて事実を暴くか?という点で今作は「X-ファイル」に近い。心霊現象や事件そのものがまやかしではないかと疑う者を登場させたことで、前作よりも人間描写に深みが増した。どんなに怪現象を体験しても、信じてもらえないことの辛さ、奇人呼ばわりされる孤独さがリアルに表現されている。そんな中だからこそ、信じてくれる人が現れることが微かな希望となって、物語の推進力となり、信じてもらえないことへ立ち向かう勇気へと繋がっていく。それ故に、ラストで少女が語る「私はラッキーだ」というセリフがとても感動的だ。

多少の脚色こそあれど、これが実話に基づくというのだから、恐ろしい話である。個人的には前作の方が怖いという印象ではあったが、実際の事件の写真と映画のシーンとを比較するエンドロールは鳥肌モノである。一番怖いのはエンドロールかもしれない。

Ao-aO