映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン! : インタビュー

2015年12月18日更新
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20代最終年を前に、長澤まさみの“いま”に迫る

長澤まさみはこの1年を「インプットの年」と表現し「よく遊びました」とほほ笑む。もちろん、遊んでいたわけではない。「海街diary」ではカンヌ映画祭のレッドカーペットを歩き、来年公開の映画の撮影にも参加。すでに大河ドラマ「真田丸」の撮影も始まっている。そしてまもなく、「コクリコ坂から」以来、3年半ぶりの声優挑戦となった「映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!」が公開を迎える。改めてこの1年を振り返ると共に、20代最終年を前にした長澤まさみの“いま”に迫った。(取材・文・写真/黒豆直樹)

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「映画 妖怪ウォッチ」で長澤は、ジバニャンたちが迷い込んだ8年後の未来で、デザイナーの卵として働く、ジバニャンの生前の飼い主であったエミちゃんの声を担当した。エミちゃんとジバニャンの秘話を描いたテレビアニメ第25話は“泣ける回”としてファンの間でも大きな感動を呼んでおり、エミちゃんは本シリーズにおける重要人物。当初、3時間の予定だった長澤の収録は、5時間に延長されるなど、念入りに行われたという。

「一度収録しては、みなさんの間で『もっとこうしたら……』といった感じで会議が始まるんです。それが終わるまで私はポツンとブースにひとり残されるという状態でした(笑)。エミちゃんに対する、日野(晃博)さんをはじめ、作り手のみなさんの思い入れの強さを感じました。責任重大でしたが、悩みながらみなさんとキャラクターづくりができてよかったです」。

実は、少女のころからアニメが大好きだったという長澤。「夕方にBSで2本立てで放送されていたアニメをいつも見ていたし、『ドラゴンボール』とか『幽遊白書』など面白いアニメがいっぱいあって、小学生のころ『私はこのまま、アニメしか見ないで生きていくのか? どうしよう、大人になれない!』とすごく悩んだ時期もあった(笑)」という。今回も完成した映画を見て「(自分の出演エピソードではなく)『妖怪になったケータ』というお話で号泣してしまいました」と明かす。

「真田丸」の撮影の合間を縫ってのアフレコ収録にインタビューやプロモーション活動…多忙であることは間違いないのだが、冒頭の「よく遊んだ」という発言しかり、どこか心の余裕のようなものがうかがえる。

「この仕事をしていると、忙しいことが偉いことだとされるところがありますし、実際、そう言われ続けて仕事をしてきました。でもやはり、人間らしくいる時間もないとお芝居に生きない。その意味で、やりたいことをやって、よく遊べたのはよかったと思います。

友達とダンスを始めたんです。音楽を聴いてダンスして、ビヨンセみたいに踊れるようになるのがいまの目標です(笑)」。

東宝「シンデレラ」オーディションで最年少グランプリを獲得して芸能界に入ったのが12歳のとき。ここまで走り続け、あと1年半で30歳を迎える。「私はラッキーな方だと思います」というのが、ここまでの道のりを振り返ってのひと言だ。

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「出会いに関して言えば、出会うべくして出会った人もいるし、求めて出会った人もいるし…バランスですね。自分がやりたいことだけを選んでやっていくという仕事のスタンスではないので、なおさらそう思います。この仕事、ずっと続けるには体力も気力もいるし、特に初めのうちはアイドルのような部分もあったので、余計難しさを感じることもありました。でも、同世代の人がみんな、同じようにずっとやっていけるかといえば、そうじゃない。やはり勝負の世界であり、淘汰もされていく。そう考えると、私はいろんな部分で恵まれて、ここまでやってこられたんだなと思います」。

もちろん、運や巡りあわせも実力があってこそ。一方で、運ではなく自覚的な点として、長澤が強調したのは「芸能界に染まらない」という自らのスタンス。「できる限り自立して普通の暮らしをしようと心がけていますし、そこは母親が厳しく育ててくれたところでもあります。この仕事をしていると、周りにやってもらうのが当たり前になって自立できなくなっちゃう部分もあると思います。自分でやりたくてもできない立場にある人もいるので、一概にそれができるのが偉いとは思いませんが、やれることは自分でやるというスタンスでいるようにしていますね」。

「いま、女優の仕事が楽しいか?」という質問には「昔よりも(笑)」という答えが返ってきた。「というか、実は昔は、この仕事があまり好きではなかったのかもしれないと、最近になって気づきました(笑)。昨年の暮れに三谷(幸喜)さんの芝居に出たんです(斉藤由貴との二人芝居『紫式部ダイアリー』)。そこで急に何か変わったというわけではないんですが、お芝居を好きになったというのはあって、最近はすごく楽しいです」。

三谷の舞台に海外のドラマ、エンタメ超大作から濃厚な人間ドラマ、そして今回の声優。バラエティにあふれる挑戦がいい刺激を与えているのではないだろうか。「そうですね。そういう巡りあわせに加えて最近、強く思うのは、仕事の質を変えるのは自分自身だということ。捉え方と見せ方で質って変わっていくもので、役柄はもちろん、作品自体も――例えば製作費が少なかったとしても、それを質の高いものに見せられるか、安っぽくなってしまうかは自分次第なんですよね。若い頃は自分のポテンシャルを上回るものを求められて、ハードルの高さに自分の成長が追いつかず、歯がゆい思いもしました。いまは、巡りあわせに恵まれているのはもちろんですが、自分の中での仕事の捉え方、向き合い方もいい意味で変わってきたのかなと思いますね」。

来年、20代の最後の年をどのように受け止め、その先の30代をどう歩んでいくのか目が離せそうにない。

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