劇場公開日 2015年7月18日

HERO : インタビュー

2015年7月17日更新
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北川景子が貫く、女優としての正義

2001年に始まった木村拓哉主演のドラマ「HERO」。06年のスペシャルドラマも、07年公開の劇場版第1弾も記録的な大ヒットを収め、いまだ色あせることがないシリーズとして愛され続けている。そして昨年、満を持しての連続ドラマ第2弾がオンエアされ、7年ぶりに帰ってきた“チームHERO”に話題はもちきり。それを受けて、ドラマの続編にあたる劇場版第2弾が完成した。ドラマ版第2弾より新ヒロイン・麻木を演じている北川景子に、この新作や「HERO」シリーズそのものの魅力を語ってもらった。(取材・文/よしひろまさみち、写真/江藤海彦)

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本作は、日本の中の外国、治外法権を認められた欧州某国の大使館が舞台となる。ネウストリア公国大使館前で起きた死傷事故。東京地検城西支部の久利生は、事務官の麻木とともに、事故を起こしたドライバーを取り調べるが、そこに現れたのは彼の元事務官で、現在大阪地検難波支部で検事を務める雨宮。事故の被害者が暴力団のからむ恐喝事件の重要参考人だったことで、雨宮が東京にやってきたのだ。それを知った久利生らは、単なる事故ではないことを察し、大使館に乗り込もうとする。

本作で麻木を演じた北川。凛としたたたずまいと、その一方秘めるタフな存在感。それが北川の持ち味でもあり、麻木のイメージともリンクする。その点は本人も意識しているようで「麻木は私とよく似ているところがあるんですよ」と語る。

「麻木と私はリンクしていると思うんです。麻木のキャラクター自体は私とは違いますが、もっとも近いのは雨宮さんとの関係です。麻木が雨宮さんに会って感じたのは、同じ久利生の事務官から今は検事になり、バリバリ働いていることへの憧れ。実際、私もこのシリーズのキャラクターでは雨宮さんが一番好きだったので、物語の中の麻木の気持ちとよく似た感情で演じることができました」

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劇中、麻木と雨宮が会話するシーンのほとんどは、雨宮が久利生のもとで事務官をしていたころや、久利生と雨宮の関係などを、麻木が質問する。ときに空気が読めない麻木らしく、場を凍らせてしまうこともあるが、ファンからしても「よく言った!」と言えるシーンに吹き出してしまう。北川もまた、このシリーズ自体のファンだった。

「『HERO』を見てファンになったのは、最初のドラマシリーズがオンエアされていた中学生の頃です。見ていたときは、やはり松たか子さんが演じる雨宮さんの、新人のふんばりなどが一番好きですっかりハマってしまったんですよね。こういう群像劇は、見ている人がどこかに自分を重ねられるキャラクターを見つける楽しみがあると思うんですが、私の場合は松さんでしたね。当時の月9ドラマのヒロインというと、誰からも慕われる女性的なヒロインが多かったと思うんですが、雨宮さんは斬新でした。等身大でサバサバしていて、まったく媚びないという雨宮さんには共感もしたし、憧れも抱きました。もちろん、今でも“HEROのヒロイン”といえば、私じゃなくて松さんという絶対的なイメージがあります。だから、今回はお仕事をご一緒できたことが、個人的にとてもうれしいことだったんですよ。雨宮さんとしての松さんも尊敬していますが、女優として日本のみならず国際映画祭などにも立っている大先輩ですから。私もいつか松さんのようになりたい、っていう憧れがあるんです」

そのヒロイン像について信念を持っている北川。特にこのビッグシリーズでヒロインを演じるということはどういうことか、という意識を持って演じている。

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「今回の場合は座長の木村さんですが、木村さんがやりたい方向性やイメージを最大限サポートして、邪魔しないようにしていましたね。その点、木村さんは、やりたいことがハッキリしている方なので、すぐに肌で感じ取れましたし、演技面では困ることはありませんでした。ドラマ版のときもそうだったんですが、麻木はグダグダ文句を言いながらも、久利生についていくという役なので、反抗することもありませんしね(笑)。また、その一方で、私が常にお芝居をするときに気をつけているのは、見てくださっている方。私が勝手に想像して気をつけていることではあるんですが、見ている方々が喜んだり、驚いたりして、満足いただければいいと思っているんです。作品の中での自分の役割はどこにあるのか、ということを常に気を配っていて、その期待に応えることが私にとっても喜びなんです。『自分だけ目立ちたい』っていう気持ちは一度も抱いたことはありませんよ。それが北川景子としての正義なのかな、と思っています(笑)」

これだけ多くの大物俳優達と共演したことで得たことも大きかっただろう。その中でも、最大の収穫はやはり「松さんと一緒に仕事できたこと」と答えた。「普段は、作品が終わって別の作品に入っているときに『あのときあれをやっておいてよかった』と思うことは多々あるんです。なので、この劇場版で学んだことはまだ多くを実感していません。でも、松さんと現場を過ごせたのは本当に大きな収穫でした。たとえば、現場に入る前は『松さんはどうやってオンとオフを切り替えるんだろう』とか思っていたんです。私自身が、集中力があまりないことでそれが気になってしまったんですが(笑)。実際にご一緒してみたら、そのスイッチの切り替えは全く見えないんですよ。いつ雨宮さんになったんだろう、っていうくらいに自然で、肩の力が抜けていて。そういう姿を見たら、私もそうありたい、と思ってしまいました」

昨年のドラマ版第2弾のヒロインとして抜擢されてから、このチームの一員となった北川。ファンのひとりとして、チームの一員として、このシリーズの魅力を再確認したそうだ。

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「いろいろな職業もののドラマがあると思うんですが、この作品は職業もののドラマに見えて、そうではないんですよね。それぞれのキャラクターを深く掘り下げて人間模様をメインにした群像劇に仕上がっているところが魅力だと思います。各キャラクターが個性的で人間くさく、不完全な人達が集まって、人間関係も非常に複雑で魅力的。そんな全員が集まって初めて“HERO”になるという物語が、私が中学生のときにこのドラマのファンになった理由ですし、今でもそこが最大の魅力だと思っています」

群像劇であり、またバディ(相棒)ものでもあるこの作品。久利生と雨宮、久利生と麻木。その関係性も魅力的だ。北川にとってのバディものの魅力を尋ねると「凸凹な関係」と即答した。

「凸凹のふたりが同じ目標に突き進んでいくのが面白さのひとつだと思うんです。久利生と麻木は、もろそういう関係だし、いわばシャーロック・ホームズとワトソンくんの関係と同じかな、と思うんです。私自身のバディは、人からよく言われるのが猫(笑)。うちの猫が、私のことを一番理解しているんじゃないか、って私も思うんですよね。私自身はO型のせいか、誰にでもスッとあわせられる性格なので、決めてくれるしっかり者の友達と一緒にいるのが楽です。だから私が主演となると『しっかりしないと……』って気分にさせられるんですよ(笑)。実は私自身が女の子らしくないので。この『HERO』が不可能に挑戦するというテーマですが、私が不可能に挑むとしたら、女の子らしく居続けること、ですかね(笑)」

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