劇場公開日 2015年1月10日

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「粘度が高く息苦しさすら感じる空気感に浸る作品。」薄氷の殺人 Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0粘度が高く息苦しさすら感じる空気感に浸る作品。

2015年1月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

良かった。

作品全体に通底する静かで重暗く冷たい雰囲気。
粘度が高く息苦しさすら感じる空気感。
淡々と話が進む中……突如、登場人物達の感情が衝突/爆発して息を呑む。
そして再び静かな場面に戻り息を吐く。
息を吐き吸い込む空気はやはり重暗く息苦しさは続く。

作品の軸となる元刑事ジャンと未亡人ウーの関係性。
その関係性の読み取りこそが本作の面白さかと。
或る行動の真の動機を、後の別の場面での行動(結果)を通して初めて知る。
作中では分かり易い“切欠”は描かれないため、両者の動機を読もうと意識が集中しました。
両者共に器用な人間に見えない分、色々な可能性が残り展開に期待が持てました。

また話の作りを成立させた役者陣も良かった。
主役2名は共に良かったですが、特筆すべきは未亡人ウーを演じるグイ・ルンメイ。
自らの人生に対する疲れと諦観が滲み出た表情、佇い。
正体不明、だけど思わず肩入れしたくなる雰囲気が体現されており話に納得感を与えていました。

惜しむらくは提示される要素の配分バランスの悪さ。
心情を台詞で説明しない点は好感が持てますが。
心情を読み取るための要素のバランスが微妙に良くない。
玉石混合、石多めで若干混乱。
確かに真相の可能性を広げるための要素提示は必要だと思いますが。
その按配が微妙に合っていない気がして…その点は残念でした。

粘度が高く息苦しさすら感じる空気感に浸る本作。

鑑賞直後の消化不良感。
鑑賞後、時間経過と共に作品の雰囲気/空気感が肚に落ちていく感じ。
個人的には原題「白日烟火」の方がより適切な題名と感じる作品でした。

オススメです。

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Opportunity Cost