劇場公開日 2016年3月12日

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「お年寄りと笑いを共有する素敵な時間でした」家族はつらいよ Cディレクターシネオの最新映画レビューさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0お年寄りと笑いを共有する素敵な時間でした

2016年5月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

単純

幸せ

正直いうと山田洋次監督作品は、
あまり見たことがありません。
個人的に寅さんや釣りバカのような、
量産型なシリーズものが苦手だからです。
それでも「東京家族」は好きだったので、
同じキャストで喜劇ということで興味が湧きました。

誕生日祝いに「離婚届に判をちょうだい。」
突然奥さんに言われた家長の修造が慌てふためき、
人情劇が転がっていきます。
そんな熟年離婚に振り回されていく家族の様子で、
2時間まるまる楽しい。
家族崩壊を描いているのは「東京物語」と同じだけど、
こっちはあたたかく壊れていきます(笑)
パラレルワールドのように意図的に対比させているのが、
実験的で面白いですね。

まるで家族あるあるの連続だから、
兄弟がいる中年以上の人は共感が大きいでしょうね。
そういえば劇場予告編で
「松竹大船調のホームドラマ復活です!」と
夢之助さんが押し付けがましく言ってました(笑)
これは松竹の映画製作が蒲田から大船に映った時代に、
これからはニッポンの典型的な家族を舞台にするという流れでした。
経済や社会問題もその会話の中で描き、
誰もが楽しめる映画を作るという思想ですね。

だからこの映画の舞台もサザエさんのような、
今ドキ珍しい三世帯家族。
亭主関白で、奥さんが敬語を使うとか昭和臭がプンプン。
古き良き日本映画を再現しようという意識が働きすぎて、
今の時代の人にはピンとこないかもしれません。
そもそも大船調は共感を作るということが目的でしたから、
もう少し今の時代にあわせた
ホームドラマにすべきだとは思いました。

でも昭和な雰囲気の中でも
古臭くない佇まいなのは、
冒頭の横尾忠則氏のタイポグラフィや、
久石譲のヨーロッパシネマのような
雄大でコミカルな音楽のおかげ。
巨匠のシゴトはさすがですね。

俳優陣も、
舞台のような大げさで分かりやすい演技の中、
妻夫木聡さんの泣き虫な次男と、
蒼井優さんの芯のあるやさしい女性が今っぽくて、
際立ちましたね。
いつも違った表情をみせてくれる実力派の二人に、
この作品でも楽しませてもらいました。

想えば軽妙なコメディを劇場で共有する体験は、
なんか久々だなぁ。
こういうのって、邦画の楽しみの一つでしたね。
劇場では周りはおじいちゃんおばちゃんばかりだったから、
一緒に笑えて楽しかった。
家族みんなでTVを見て、
笑ってた子供の頃を思い出しました。
こんな切ない時代に、
映画館でちょっとだけ温かい気持ちになれたのが、
何より嬉しかったのです。

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