劇場公開日 2015年1月31日

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「音楽の力で、心がぽかぽかになります」マエストロ! ぺたぺたさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0音楽の力で、心がぽかぽかになります

2015年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

幸せ

クラッシックって何だか敷居が高い。そう思っている人にこそオススメの映画です。
揺るぎないものに思えた「古典」がこんなにも身近に、生き生きと胸に迫ってくることに驚きました。

全体的に説明的な台詞が少なく、大切なことは音楽を通して語られた印象です。
何と言っても佐渡裕さんがこの映画のために録音した「運命」と「未完成」は絶品です。また、辻井伸行さんが書き下ろしたエンディングテーマも泣けます。最高です。
ただ、それらに勝るとも劣らないのが、オーケストラの練習シーンで流れる「いまいち」な音色と、各シーンを彩る少しユーモラスな劇伴。ここまで音楽というのは雄弁なのかと舌を巻きました。

それから、登場人物のキャラが大変素晴らしかったです。
謎の、というよりは、化け物じみた、と言った方が正解の、浮き世離れした指揮者天道。この極めて漫画的なキャラクターに西田敏行さんが血肉を与えています。突っ込みどころは多々あれど、その豪腕にねじ伏せられ、何だか納得させられてしまいました。
そんな天道からの挑戦状を真正面から受けて立つ主人公香坂は、史上最年少で伝統ある交響楽団のコンマスに抜擢された天才ヴァイオリニストという設定。但しこの香坂、下手をするとただの鼻持ちならない人物になりかねないところですが、育ちの良さそうな雰囲気をまとった松坂桃李さんが大変魅力的に演じています。憂いを帯びた表情、スラリとした立ち姿、楽器を操る美しい指捌きなどは必見。しかも、ちょっと抜けている感じとか、個性豊かなメンバーに振り回される残念な感じなども良い。
miwaさん演じる天真爛漫なフルート奏者の可愛らしさや、腕のある役者さん達の燻し銀の演技も素晴らしく、そこかしこでふふっと笑い声が出てしまうこと必至です。

ほろりと来た箇所は数あれど、私が一番泣かされたのはエンディングでした。
「運命」の演奏シーンに高揚し、「未完成」の演奏シーンに息を詰めた後の、最後の最後の場面。どの登場人物の思いに寄り添ってもじーんとしますが、オススメは天道の気持ちになって香坂を見つめることです。何とも言えない熱い思いが込み上げ、エンディングテーマに耳を傾けながらぽろぽろ泣く気持ち良さは癖になりそうです。

この映画を通じて、音楽の持つ力を改めて感じました。見終わった後、本当に心がぽかぽかして幸せでした。

是非、音響設備の良い映画館で耳を澄ませてみてください。

ぺたぺた