劇場公開日 2012年11月9日

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「シルク・ドゥ・ソレイユの不思議な世界にどっぷり浸れる贅沢な作品」シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5シルク・ドゥ・ソレイユの不思議な世界にどっぷり浸れる贅沢な作品

2013年9月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

幸せ

 公開時は、3Dで見ました。浅草公会堂で上映会があったのでレビューアップします。 ジェームズ・キャメロンが製作総指揮をしているだけに、3Dの圧倒的な立体感に息を飲みました。恐らくこれまで最高の立体感ある作品だと思います。
 台詞のないまるで無声映画のようなストーリーだけど、かえってそのほうが映像に見入れて良かったと思います。
 全編に取り入れれたシルク・ドゥ・ソレイユの演技は期待通りの超絶技巧を見せ付けてくれます。全演目のなかから選りすぐったシーンをきら星の如く挿入。それが一番よく見えるカメラワークで見せてくれるのですから、特等席に座った気分になれます。
 難易度の高い技を当たり前に演じるのを見ていると、人間が次第にデフォルメされてこびとの人形のように思えてきます。生の人間が演じているのが信じられないくらいの演技の連続とそれを支える音楽、舞台装飾の素晴らしさで、すっかりシルク・ドゥ・ソレイユの不思議世界の虜となりました。

 一応ストーリーらしい設定は、ピエロに渡されたチラシに導かれたミアが、チラシに写っていた空中ブランコの青年に一目惚れした結果、青年は空中から落下。彼を助けようと駆け寄るけれど、青年は地面に飲み込まれるように姿を消しますのです。ここから不思議世界に突入。青年を追かけたミアも巻き込まれてしまうのです。

 彼女は迷い込んだ不思議な世界は、人気のない砂漠にテント小屋が並んでいて、ずっとサーカスの演目を続けているようなところでした。彼女は、ピエロの格好をした魔法使いの案内で、テント小屋を訪ね歩き、消えた運命の青年を探し求めるのでした。

 テント小屋ごとにテーマが決まっていて、水の国、火の国、金属と歯車の国、土と垂直な壁の国、空の国(空中演目中心)などそれぞれのテーマごとに、団員たちが超絶技巧を披露していたのでした。どちらかというと映画を楽しむよりも、シルク・ドゥ・ソレイユの演目を楽しむ要素が強い進行です。

 けれども、ラストの空の国で、ミアと青年がやっと相まみえるシーンは、凄くロマンチック。

 運命の出会いをたった一本のロープ状に伸ばした布に委ねて、青年は片腕だけでミアを抱きかかえて、ヒモ伝いに空高く舞い上がっていくのです。その舞い上がる姿勢の美しさと出会えた喜びを爆発させる歓喜に満ちた表情が素晴らしいのです。見ているだけで目頭が熱くなりました。

 Blu-rayでも3Dがあればいいのですが、2Dでもラストシーンの感動は少しも色あせることはありませんでした。
 1度でもシルク・ドゥ・ソレイユの公演を生で見た人は、この映画がどれくらい価値のある映像か実感できるでしょう。本作を見て感動した方は、ぜひ1度お金を貯めてナマの公演を見に行ってみてください、生涯忘れられない思い出を作れることでしょう。

流山の小地蔵