劇場公開日 1956年3月6日

「結婚だけが女の幸せと侮る勿れ...  弱きを助け、強きを挫き、他人に媚びない唯我独尊の全きモラリスト映画!!」見事な娘 O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0結婚だけが女の幸せと侮る勿れ...  弱きを助け、強きを挫き、他人に媚びない唯我独尊の全きモラリスト映画!!

2023年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 CSの日本映画専門チャンネルの"蔵出し名画座"にて鑑賞。
 雑誌「婦人倶楽部」に連載されたサラリーマン小説の大家源氏鶏太の小説を、『殺陣師段平』(1962年版)が代表作の瑞穂春海が監督したOL人情譚。
 零細企業の経営者を父に持つ若い娘が主人公で、職場では恋に仕事にグルメにエステに青春を謳歌しつつも、近親者からの金の無心や窮状にも極めて大人な対応をし、降って湧いた玉の輿話にも之幸いにとは飛びつかずあくまで己の生き方を貫くことを大切にします。
 同監督が戦前に撮った『女の気持』(1940)は主人公とその周囲の痴情の縺れや女性の自己犠牲、打算等々、濃密な情念のドラマながら本作はそれと高コントラストとも呼ぶべき内容で、己の身の上にも周囲の悪意にも拘泥せずただただ朗らかに己が人生と倫理を奉じる姿は健気で気高くもあり、今にして思えば後に始まるNHKの朝ドラのヒロインとそのドラマのような清々しいテイストも感じられます。
 今観ても主人公の真っ直ぐさと高潔さに心が洗われるようですが、女性が"如何に良縁を掴んで玉の輿に乗るか"の思考を暗に強いられていた当時の気分では、なおのことカウンターパンチの如き爽快さを伴った作品だったのではないかと察します。

O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)