「コメディだけではないルビッチ監督の知られざる反戦映画の名作」私の殺した男 Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5コメディだけではないルビッチ監督の知られざる反戦映画の名作

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

世に知られたコメディの巨匠エルンスト・ルビッチ監督の異色のシリアスドラマの特異な位置にある名作。小品ながら、作品が内包している主題の深刻かつ重大な問題提起の主張力が強い映画。ルビッチ監督の登場人物に対する愛情と理解がひしひしと感じられて、通俗的なヒューマニズムでは収まらないより身近で本質的な、ルビッチ監督の人間的な優しさに深く感動してしまった。監督の特長を知ったギャップの大きさも要因にあるのだろうが、それでもこのような経験は滅多にないものだ。ルビッチ監督が真剣なドラマを映画にすると、その寛容さがジャン・ルノワール監督と変わらない懐の深さを持つことを知る喜びもある。
ドイツの老夫婦と息子の婚約者の家族愛、そこに加わるフランスの青年の誠実なこころが、美しさの極みで描かれていて、見事としか言いようがない。父役ライオネル・バリモアの名演により、この非現実的な物語が、おとぎ話に終わらず正しく”映画としての語り”になって、観る者を説得させこころを揺さぶり、そして戦争と人間について考察させ、最後は許しの境地へ導いてくれる。

黎明期の映画は、単なる見世物小屋のアトラクションに過ぎなかった。しかし、1910年代になると動く映像の可能性に芸術の価値を見出したことで、時間芸術と空間芸術を併せ持つ”第7芸術”という新しい分野を唱える様になった。そして、サイレント映画の初期の名作が続々と作られるようになったが、その同時期にある歴史的事件の最大の象徴が、第一次世界大戦(1914年~’18年)である。映画が何故生まれたかを考えたとき、それは偶然ではあるが、戦争を無くすために生まれてきたのではないだろうか。第二次世界大戦までの間に作られた第一次世界大戦を題材にした反戦映画の名作が、そのことを教えてくれているように、思えてならない。そんなことを考えてしまう、このエルンスト・ルビッチ監督の知られざる名作が、より多くのひとたちと巡り合うことを願って止まない。

Gustav