猟奇島

劇場公開日:

解説

これは「キング・コング(1933)」のアーネスト・B・シューザックが「お蝶夫人」「ミラクルマン(1919)」出演の俳優アーヴィング・ピチェルと共同して監督したもので、リチャード・コネルの原作を「キング・コング(1933)」のジェームズ・アシュモア・クリールマンが脚色した。撮影は「青春来る(1931)」「おしゃれ牧場」のヘンリー・ジェラード担任。出演者は「キング・コング(1933)」のフェイ・レイおよびロバート・アームストロング、「南海の却火」「街のをんな」のジョエル・マクリー、舞台俳優のレスリー・バンクス等である。

1932年製作/62分/アメリカ
原題:The Most Dangerous Game
配給:千鳥興業社
劇場公開日:1933年8月

ストーリー

ニューヨークの金満家でスポーツマンのボッブ・レインスフォードは、ヨットでアルゼンチンへ豹狩りに出かけた。ところが途中で暴風に遭遇し、難破してある孤島に漂着した。その名も知れない孤島には豪然と石造の家が聳えていた。こんな孤島に住む人があるのかと審かりながら、ボッブが訪れてみると、その家の主人というのは貴族らしい身なりをした紳士で、ザロフ伯爵と名乗る男だった。ザロフ伯爵は、その自ら語るところによれば、あらゆる野獣は狩り尽くして、もう野獣には興味を失ってしまい、今では「最も危険なる狩猟」をしている神秘的人物であった。伯爵邸にはボッブの他に、やはり難船で漂着したマーティン・トロウブリッジとその妹イーヴとが厄介になっていた。ある夜、深更ボッブはイーヴに眠りを醒まされた。ボッブは恐怖に震えているイーヴと共に捕獲品室に忍び入って、図らずもそこに人間の首級を発見した。ザロフ伯爵の所謂「最も危険なる狩猟」とは人間の狩猟であったのである。そしてイーヴの兄マーティンは既にその犠牲となって惨殺されたのである。次の獲物になるのは当然ボッブであった。かくて世にも稀なる恐るべき狩猟が始められた。ボッブはイーヴを伴って密林深く逃げ込んだ。跡から伯爵の悪魔の如き眼が追い迫って来る。ボッブが伯爵の猛犬と戦っている最中、伯爵の弾丸に中り、犬諸とも滝の中に墜落し、イーヴは伯爵の手に奪われた。しかし弾丸が命中したのはボッブではなく犬であった。ボッブは伯爵と争闘を開始し、ついに彼を倒れしてイーヴを救った。

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映画レビュー

3.5御姫様だっこでフェイ・レイ絶叫! デス・ゲーム映画の元祖みたいな、密林バトルものの佳作

2021年8月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

シネマヴェーラで、『フリークス』の次枠の上映回で視聴。
若干ホラー寄りの禍々しい邦題がついているが、原題は『The Most Dangerous Game』。
そのタイトルどおり、絶海の孤島でロシア人伯爵がいうところの「最も危険なゲーム」が描かれる。この作中での「ゲーム」という単語は、ハント・ゲームというよりは、「狩猟対象の動物・獲物」の意で使われているようだ。地球上で最も危険なハンティング・ターゲット。すなわち……人間、という話ですね。
今日びくさるほど作られているデス・ゲーム系マンハント映画の、まさに「はしり」ともいえる作品であり、その発想力は100年近くたった今も、まったく古びていない。

シネマヴェーラのチラシ解説には、「『キング・コング』の製作者・セルズニックが、同じセットで使って撮った」と書いてあるだけだが、英語版Wikiでは、先に『猟奇島』のためにセットが組まれ、そのあと製作のメリアン・C・クーパーが「このセットを流用すれば、前年にパラマウントで予算上無理だと断られたコングの映画が撮れるじゃないか!」と思いついて、セルズニックに話を持ち込んだ、という流れらしい。
なんにせよ、この孤島のジャングルのセットを使いまわして、『キング・コング』を昼、『猟奇島』を夜撮る形で平行して作っていたそうで、キャストも両作品で何人か被らせている(『キング・コング』の作中における監督・女優コンビ、ロバート・アームストロング&フェイ・レイは、本作では兄妹の役で出演)。結局、先に完成した『猟奇島』が32年に公開され、翌年の『キング・コング』のメガヒットにつながった、ということのようだ。

南アメリカ西海岸を走る豪華ヨットが、船長の警告を無視して岩礁地帯に突入した結果、座礁し沈没・炎上する。乗っていた客のうち、トロフィーハンターで作家のボブだけがなんとか生き延び、近くの孤島に上陸する。そこには要塞のような屋敷があって、ロシア人伯爵とコサックの家来たちが住んでいた。屋敷には、別の海難事故で漂着した兄妹がゲストとして滞在しており、ボブも厚遇を受ける。ピアノの達人で、自分も狩猟が趣味だと語る伯爵。しかし、あらゆる「狩猟」を経験して、いつしか「飽き」を感じてしまった伯爵が、ついにたどり着いた究極の「狩猟」は、他と一味変わったものだった……。

先をまったく読ませない前半は、なかなかの傑作。
出だしで使い捨てられる紳士諸氏の生存率の低さと、サメの活躍にまず笑う。
「たどり着いた先」が、「おびき寄せられた先」で、「絶海の孤島」というロケーション自体が、そもそも「趣向のためにしつらえられた舞台」だったというロジックの逆転が実にいい。
これまでさまざまな大型動物を狩って来たトロフィー・ハンターが、今度は自分が狩りの標的にされるという皮肉を浮き彫りにする、伯爵の「最高の狩猟」に関する長広舌は、聞いていて本当によく書けた脚本だと感心した(実はここをあの連続殺人鬼ゾディアックが暗号文のなかで引用しているとされる)。

俳優陣もそれぞれ素晴らしい。
レスリー・バンクス(ヒッチコック『暗殺者の家』の主役)の鬼気迫るロシア訛りの怪演。
得体の知れないコサックの使用人たち(ロシア人というよりフー・マンチューみたいw)
伯爵に絡みまくるへべれけのロバート・アームストロングの危険なコミック・リリーフぶり。
神経症的な美しさのフェイ・レイをふくめ、病的なメンツの揃う城内で、ジョエル・マクリー(ヒッチコック『海外特派員』の主役)の健全さが光る。

ただ、いざマンハントが始まって、ジャングルを舞台とした猫と鼠のアクションが展開されると、さすがに時代を感じさせる部分は多くなる。
まずテンポ感がだいぶのんびりしているし、全体に緊張感もゆるみがちだ。
拘束していたボブを解放する際の手際があまりに乱暴だし、トラップに関してはもう少し有効な仕掛けようがありそうだ。そもそも伯爵にとっては「庭」に等しい島で、あるとわかってる亀裂に落とし穴を仕組んでもそうそう落ちるわけがない……。
伯爵が入ったら沈んで死ぬぞとさんざんいってた「霧の沼地」に、平気でじゃぶじゃぶ入っていって無傷で出てくるふたりも、平気でそれを追って分け入っていく伯爵一行も、さすがにどうかと思う。

とはいえ、『キング・コング』に先駆けて、「絶叫クイーン」フェイ・レイをお姫様抱っこでさらわせて、絶叫させてるのは、やはりGood Jobと言わざるを得ない。
あと、主人公のボブが終幕の格闘シーンで、WWEのフィニッシュホールドにでもできそうな、強烈にヤバい変則バックブリーカーでコサックの背骨へし折るシーンがでてきて、コロナ禍なのに危うく大爆笑してひんしゅく買うところだった……(笑)。30年代に、これができるってのか。必見です!

あとどうでもいいけど、シネマヴェーラの字幕、訳者さんがテキストに、傍点(、、、)を打ちたい単語の指示をあちこち書き入れてるのが、そのまま「:傍点 ●●」って字幕になっちゃってるけど、上映前に一回くらい確認用に試写とかやんないのかな? 最初なにかと思ったよ……。

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じゃい
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