鬼火ロウドン

1918年製作/アメリカ
原題:Blue Blazes Rawden

ストーリー

永い樵夫生活を終えて「レィディー・フィンガース」のヒルガードの酒場へ帰ってきた「鬼火」ロウドンはジョーという無頼漢に喧嘩を売られ、彼を殴り倒して踊女バベットに恋される。ヒルガードはロウドンに骨牌の勝負を挑んだが勝負に敗け、今度は暗室で拳銃で決闘し勝った者は酒場とバベットを手に入れようと申し出た。彼は卑怯にもまずロウドンの拳銃から銃丸を抜いて置いたが、いざ決闘となると臆病な彼の銃丸はロウドンに命中しない。ついにロウドンはヒルガードを殺したが、死ぬに際し彼は母が近く訪ねてくるからよろしく頼むと遺した。ヒルガードの母と弟のエリックが到着した時、母の心に動かされたロウドンは、ヒルガードは立派な男であったと物語り、できるだけの世話をするのであった。しかしロウドンはついに心苦しくなって町を去ろうとした。バベットはロウドンが愛してくれぬと怒り、エリックはロウドンを射撃したが、傷を受けながらロウドンは黙って雪中に姿を消す。兄の卑怯な行をやがて聞き知ったエリックは、母には何事も打ち明けなかった。

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映画レビュー

3.0サイレント映画の西部劇スター ウィリアム・S・ハートの心理劇の人間ドラマ

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

サイレント映画時代の最高の西部劇スター ウィリアム・S・ハートが主演・監督の代表作と謂われるが、プリントの損傷が酷く半分の長さもないので鑑賞したとは言い難い。しかし、この西部劇が当時の一般的な標準化されたストーリーから飛躍して、主人公の複雑な深層心理を扱っているのは理解できたし、注目に値すると思った。
酒場の踊り子バベットを巡り、木こりのロウドンと酒場の主人ヒルガートが決闘する。臆病なヒルガートはロウドンの拳銃から弾丸を抜かせておいても、ロウドンに銃弾を命中させることが出来ない。ヒルガートの卑怯なやり方に激怒したロウドンは、持ち前の力で優勢に立ち彼を射殺してしまう。その後ヒルガートの母親と弟エリックが町に現れ、ロウドンは後悔と責任に囚われながらもヒルガートについては嘘を付き親切に接するのだが、母親から愛情を掛けられ却って苦悩する。優しい心の持主ゆえの悩みのロウドン。どうしても真実を打ち明けられない辛さから最後は町を去っていく。
西部劇なら正義と悪党の単純明快なドンパチの爽快感が普通と予想していたが、これは想像以上の人情劇になっていたし、拳銃の名手が正義を貫く困難さを扱っていた。西部劇の姿をした心理劇の人間ドラマとして記憶したい。(45分5巻)

  1976年 12月7日  フィルムセンター

同時上映は、淀川長治氏9歳の時の映画開眼作「ウーマン」1918年(60分7巻)だった。アメリカからプリントが来たが、残念にも「中世パリ篇」が欠けていたのでこれも完全版ではない。この時淀川長治氏もフィルムセンターに来館する。流石に声は掛けられなかったが、一緒に見学出来たことはいい思い出になっている。監督は「モヒカン族の最後」1920年のモーリス・トゥールヌール。英語読みでモーリス・ターナー。女性とは、と学者が辞典を抱えて話始めるオムニバス形式のエピソード集。「ブルターニュの伝説」と「南北戦争篇」が面白くて深い。前者は、アザラシが岩場で皮を脱ぎ捨て人間に変身するが、若い女性ばかり。それを見た漁師の若者が悪戯で脱いだ皮を一つ隠してしまう。仲間が海に帰るのに一人途方に暮れる美しいアザラシの女性。若者は声を掛け優しく接し家に招待する。すると何と二人は夫婦になり、可愛い子供にも恵まれ幸せな家庭を持つのであった。しかし、そんなある日、妻は漁師が隠した自分の皮を見つけてしまう。怒れる妻は、夫と子を捨てて海に帰っていく。女性が一番嫌うのが男の嘘という、古今東西、全生物に当て嵌まる真理を分かり易く教えてくれる。全男性必見の逸話。後者は、若い兵士を敵の追跡から匿ってくれた若い女性がいる。だが、敵の兵士が持っている金時計に目が眩み、兵士の居場所を教えてしまう。彼女は金時計を嬉しそうに持ち歓喜に満たされるが、その時銃声が聞こえてきて我に返る。金時計を放り投げ、嘆き悲しむ若い女性。伏線として逃げる兵士が来る前に、彼女は友人が自慢する金時計を恨めしく見ていたのがある。金品に弱いのは女性に限らないが、ブランドものに弱いのは女性の方が顕著であろう。同等の友人が所有しているのに嫉妬する点で、女性の一面を表していると思われる。
サイレント映画時代は映画自体が男性優先であった。美しい女性には気を付けろ、の映画は悪女映画以外でも意外と多い。今は、馬鹿な男には気を付けろ、の女性映画が増えている?

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Gustav