劇場公開日 2012年6月9日

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「三文コメディと思わされたのがラストで、大感涙の感動ドラマに意味合いが豹変します。」ハロー!?ゴースト(2010) 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5三文コメディと思わされたのがラストで、大感涙の感動ドラマに意味合いが豹変します。

2012年5月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 公開して、僅か2ヶ月でハリウッドリメイクが決まったというスピリチュアルなコメディ。シナリオの完成度の高さで、大ヒットとなったという触れ込みで、試写会に臨んだまではよかったのです。

 けれども前半の自殺未遂を図った主人公とその時の臨死体験が元で、取り憑くようになった4人の憑依霊とのどうしようもないドタバタ調のやりとりにはうんざりしました。
 ストーリーは、4人の憑依霊の現世で叶えられなかった願い事を、主人公のサンマンが変わりに叶えてやって成仏に導いてあげることと、入院先で出会った看護婦ヨンスとの恋の成就がメインになっています。
 本当に安っぽいコメディだなとハラを立てつつ、ウトウトしていたら、それはキム監督の仕掛けた計算だったのです。 ところが本作のラストのドンデン返しは、本当に衝撃的でした。どうしょうもない三文コメディと思っていたのが、号泣してしまうくらいの感動作にガラリと変わってしまったのです。 サンマンがヨンスに愛の告白をするとき、子供の頃に失っていたある記憶が鮮明に蘇ります。なぜ記憶を失っていたのかという理由付けも絶妙。
 その記憶を辿っていくうちに、ヨンスに否定されたゴーストとは金輪際関わりたくないと追い出してしまった4人のゴーストとの関係が明かになり、冒頭からのドタバタ劇の意味がガラリと変わってしまうのですね。
 まさかの展開をぜひ味わって、ホロリと泣いてください。

 物語は、生きる希望を失ったサンマンは何度も自殺を図るところから。この男、なぜかいつもうまくいかない。例えそれが自殺であっても。ある日、川への投身自殺が失敗に終わり、病院のベッドで目覚めたサンマンはゴーストが見えるようになっていたのです!
 目の前に現れたのは、ヘビースモーカーの太ったおじさん、泣き続ける女、看護婦のお尻をみて二ヤ二ヤ顔のエロじじい、ベッドで飛び跳ねるうるさい子供、といった一風変わった4人のゴーストたちでした。無事に退院できたまでよかったけれど、ゴーストたちがもれなくサンマンに憑いてきてしまいます。ゴーストたちのせいで、死ぬに死ねないサンマンは霊媒師のところに行きます。すると、ゴーストたちを成仏させるためには、それぞれがこの世でやり残した願い事を叶えてあげなくてはいけないといわれてしまいます。
 はじめは信じなかったサンマンだったが、仕方なくゴーストたちの望みを聞いていくことに。

 1人目、エロじじいゴーストの願いは、カメラを取り戻すことでした。2人目、食いしん坊ゴーストの願いは、アニメ映画を見ることでした。3人目のヘビースモーカーゴーストの願いは、愛車を取り返して、ドライブすることでした。そして、最後の泣き女ゴーストの願いは、好きな人たちに食事を作ってあげることでした。まず、エロじじいゴーストの願いを叶えるべく病院を訪れたサンマンは、美しい看護婦ヨンスに出会い、一日惚れ!偶然か必然か、ゴーストたちの願いごとを叶えていくうちに、ヨンスとの距離が近づいていったのです。
 そんなとき、ホスピス病棟に入院していたヨンスの父親が亡くなります。ヨンスの父親ゴーストは天国へ旅立つ直前にサンマンの前に現れ、最後の言葉を託していきました。その言葉をヨンスに伝えようと、サンマンは自分にはゴーストが見えることを打ち明けます。しかし、看護婦として人の死にたくさん立ち会ってきたヨンスには受け入れることができず、突き放されてしまいます。傷ついたサンマンはゴーストたちの存在に苛立ち、「願いごとを叶えてやったのだから、早く出て行け!」と強く言い放つのです。

 翌日、意を決したサンマンはヨンスのもとを訪れ、想いを告白します。「生きていきたい。ヨンスさんと一緒に。」すると、ヨンスとのふとした会話からあることに気がつくのです。それはサンマンの失われていた記憶に隠された思いもよらない幸せな真実だったのでした!

 それにしてもチャ・テヒョンは、4人の個性豊かなゴーストにとり憑かれる主人公を実にそれらしく演じています。『猟奇的な彼女』で見せたマゾッけも充分。そしてネタバレになるから具体的にはいえないけれどテヒョンは何と1人5役に挑戦しているのです。彼の魅力が一杯詰まった作品として、韓流ファンなら必見でしょう。

 まさ本作の苦労した点として、4体が重なる憑依シーンをどう撮影するかということでした。いくら役者根性があるテヒョンでも4人の俳優に乗りかかれると立っていられなくなるのは当然。そこでワイヤーで4人をつるし上げることで何とか、それらしい映像に仕上げることが出来たそうです。

流山の小地蔵